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無法者どもに仲間が殺され、ポートマフィアに加入した頃のこと


あの晩の襲撃を辛くも乗り越えた僕等は、用意された棲家につましく暮らしていた


その日は初めてと言える僅かの給金が手に入った日で、少し早歩きだった


ーー二人に、好きなものでも食べさせてやりたい


しかし、棲家が見えてきたとき、異変に気づいた。


銀が、泣きじゃくりながら太宰さんに何かを訴えているようだ



嫌な予感に、走って棲家に向かった





棲家に着くと、僕の姿を認めたらしい銀が、
取り乱した様子で駆け寄ってきて、矢庭に叫んだ




「Aが殺されたの、私を庇って。貧民街に行ったの。墓を作りたかったの、みんなの。そしたら私が攫われて。奴ら、私を殺そうとして、Aが庇って、撃たれたんだ。兄さん、兄さん。殺されたんだ」





眼前が、真っ暗になった
給金が入っている封筒がバサリと音を立てて足元にあたる
時間が随分ゆっくりと進んでゆくように感じられた
こんなにノロったく時間が進むと、そのうち嫌でも段々と、冷静になってきてしまうだろう


頼むからもう、タチの悪い冗談は、もうよして欲しかった

やめろ、やめろ、やめてくれ

もう良い、もう良い

もう、僕から何一つとして奪われたくはなかったのに

何故、奴が死なねばならなかった

何故、何故、何故

考えても答えなど出ないような問いで頭の表面は埋め尽くされた。
しかしその傍らで、こころが静かに僕にこう訴える



“遂に喪ったんだ、自分を犬畜生から人間に変えた奴すらも”

“遂に喪えたんだ、これから正誤の境を失うことへの恐れを”

『もうこれで、お前は銀しか守るべきものがないのだな』と




それが良いことか悪いことか、今の僕では判断できなかった
日は沈み、啜り泣く銀の声があまりに生々しく聞こえた
そこから先の記憶はあまりにも曖昧すぎて、どうにも思い出せぬ

ただ少し覚えているのが、
太宰さんにAを殺した奴の行方を尋ねたこと、曰くそいつらは既に軍警に引き渡されていたことであった

その日、僕のこころというものには、大穴が空いた

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月華(プロフ) - 梅雨さん、新作品おめでとうございます!タイトルも採用していただいて、とても嬉しいです!お話を楽しみにしていて、梅雨さんを応援してますので、頑張ってください! (5月12日 10時) (レス) id: 216fbd3da5 (このIDを非表示/違反報告)
フラグ警察(プロフ) - 失礼します。こちら二次創作物のようですので、オリ,フラは外された方が良いかと…💦 (2023年5月7日 20時) (レス) id: b5d6f4556d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:吾輩は梅雨である。書生であるが猫は食べぬ。 | 作成日時:2023年5月7日 19時

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