【エイジ】赤色に染まる【アバンティーズ】 (ページ40)

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第36話ページ40

｢はぁはぁ…｣

気づけば私はただ走っていた。

本当は気づいてた。

えいちゃんの気持ち。

気づいてたのに、気付かないふりをしてた。

確かにそこにあったのに、無いことにした。

今の関係が壊れることが怖くて、

消えてしまうことが怖くて、

失うことが怖くて、

ずっと気づかないようにしてた。

気づかないように､

気づかれないように、

ずっと逃げてた。

けど私は知らなくて。

伝える側の気持ちを､

何も知らなくて。

好きだって気持ちがなかったことにされる辛さを。

好きだっていう三文字を伝えられないもどかしさを。

好きだっていう気持ちを伝える勇気を｡

何も知らなかった。

不意に頬に一筋の水が伝った。

それと同時に降り出した雨。

涙なのか雨なのかもう分からないや。

｢花梨？｣

私の名前を呼んだ声は何故か懐かしくて､

心が暖かくなって、

今の私の涙腺を壊すのは簡単だった。

｢…そらっ…！｣

涙と雨で濡れた私を見たそら。

全てを見通している様だった。

何も聞くことなく、傘を差し出した。

｢風邪ひくよ｣

その優しさが今は羨ましくて仕方が無い。

受け入れる優しさを、

何も聞かない優しさを、

私にも少しは分けてよ。

肩に触れたそらの手は暖かすぎて。

それさえも求めてしまう私はずるい。

｢花梨…こんな時にごめんね。｣

そんな言葉でさえもその次の言葉に繋げてしまうんだ。

｢俺が好きって言ったら…怒る？｣

やめてよ。

何でそんなに優しくするの。

余計私が惨めになるだけじゃん。

｢…そら…｣

名前を呼ぶことしか出来ないなんて本当にずるい。

呼ぶことしか出来ないんじゃなくて、

呼ぶ事しかしないんだ。

あぁ、やっぱまだ具合悪いなぁ。

具合悪いのに雨に打たれるなんて最悪…｡

これは一日中家パターンかな。

なんかちょっと眠くなってきたな。

と言うより息苦しいや。

｢ごめんね花梨｡｣

なんで謝るの。

謝らなきゃいけないのは私の方なのに。

霞む視界と消え去る意識の中で聞こえた言葉はこれだけ。
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゛好きだよ゛