【エイジ】赤色に染まる【アバンティーズ】 (ページ38)

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第34話ページ38

｢おじゃましまーす｣

怠さが残る体を動かし、アバンティーズハウスへと入った。

｢はーいって花梨顔色悪くない？大丈夫？｣

玄関に迎えに来てくれたえいちゃんが私を見てそう言う。

さっき鏡で見た時めっちゃ青白かったからこれはしえいちゃじゃなくても誰でも心配するだろうなっていうレベル。

｢大丈夫大丈夫｣

こめかみを嫌な冷や汗が流れる。

その汗は首をつたり、ゆっくりと硬いアスファルトの床に落ちた。

一瞬シミになったが､それはすぐに消えてしまった。

えいちゃんは私を連れてしぶしぶリビングへと向かった｡

｢あれ、えいちゃん1人？｣

｢うん。みんな用事あるんだって。俺一人で暇だから花梨呼んだの。｣

｢ハイハイ寂しかったんでしょ？｣

｢そういうのだるいいいわ。｣

そう言ってスマフォをいじり出したえいちゃん｡

図星をつかれるとすぐスマフォをいじる。

出会って五ヶ月くらいになるけど、えいちゃんの癖は何個か見つけた｡

そう言えば五ヶ月か…｡

時が流れるのは一瞬過ぎて､大事な時こそ忘れがちになる。

けれどそれを忘れてしまえば、逃げてしまえばもう元に戻れなくなってしまう時もあって。

｢えいちゃん､スマブラやろ｣

｢また？どうせ花梨負けるじゃん。｣

｢家で練習したから今度は負けない！｣

｢わざわざ買って練習したのかよww｣

｢そうだよ偉くない？それだけのために一式買うって。なかなかの勇者だよ｣

えいちゃんといつも通りの何気ない会話を交わしながら準備をしていく。

その時、ベランダのガラスにポツポツと透明な小さな水溜まりが出来て言った。

｢雨降ってきた！傘もってきてないよ～｣

｢どうせすぐ止むでしょ｡｣

｢まぁ、そうだね｣

振り続ける雨を無視し､ゲームをする私とえいちゃん｡

窓の外に振り続ける雨｡

あの時帰っていれば、このまま過ごせていたのかもしれない。