嵐の前の静けさ ページ9
スネイプの、貫くような鋭い視線にAは恐れることなく力強く見つめ返した。
「もう………、やめろ」
ひっそりとした低音の声は、いつものように嘲りも煽りもしないその言葉はAを本気で心配していた。
「………教授の言いたいことはよくわかってます。でも、私を止めようとしても無駄かと」
スネイプは硬い顔で黙っていた。
「ハリーがあなたを疑っています。あなたが……ハリーを殺そうと彼の箒に呪いをかけたと」
「なぜ……そのことを吾輩に告げる？」
「私はあなたを信じている……理由はそれではいけませんか？」
Aはそこで初めてスネイプに微笑みを見せた。目を瞠って硬直するスネイプを前に「私はあなたの生徒ですから師を信じるのは当たり前です」と続ける。
「あ、もう、こんな時間ですね。お疲れのところ、ありがとうございました」
話している間に同時進行して行っていた一メートルのレポートを書き上げたAは時計を見て立ち上がって扉の外に消えていく。
それを固まったまま見送ったスネイプは項垂れながら、ため息を吐いた。結局止められなかったと。
仕方が無い、彼はやはり最愛に似た性格をしたAに弱かったのだから。
・
──もうすぐクリスマスだ、そう待ちに待ったクリスマスにホグワーツは浮かれていた。
行事などに流されにくい、スリザリン生も例外ではなくクリスマスのご馳走やプレゼントを想像しながらニヤニヤと荷造りを始めていた。
クリスマスパーティーに誘われることも多く、あまりの量に返事するのも疲れてきてAは同寮生を避ける日々を送っていた。
十二月も半ばのある朝、目覚めればぶるりと身震いした。毛布を抱き寄せ己の体に巻きつけながら思う。毛布の中から出たくない。
いつまでもそうしてはいられず、Aは恐る恐るベッドから起き上がった。
「んん、ふぁ……おはよう。相変わらず早起きね、A……」
「おはよう、ダフネ」
毛布からちらりと顔を出すダフネは制服に着替えているAに問いかけた。
「……A、もう行くの？」
「勉強しに、ね。大広間でまた会いましょう」
課題と勉強道具を取りながらAは微笑んだ。
「うんわかったわ……風邪引かないように着込んで行ってね。私はもう少し寝る、わね……」
「ええ、おやすみなさい」
ウトウトと瞬きをゆっくりし始めるダフネを撫でて寝室を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つき(プロフ) - くらげさん» 楽しんでもらえてとっても嬉しいです！！優勝杯のシーン、共感して貰えて何よりです……スリザリン強火オタクの叫びを受け止めてくれてありがとうございます！！ 性格がキツめな夢主ちゃんのことを好きだとは……感謝です！ ドラコとの絡み、私も楽しみです〜 (10月15日 13時) (
レス) id: cbccae9c94 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - くらげさん» コメントありがとうございますっ！書籍化希望だなんて嬉しいです〜これからも楽しんで読んでもられるように頑張って続き書いて行きますね〜！ (10月15日 13時) (レス) id: cbccae9c94 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 真剣に書籍化希望です笑 素敵な作品をありがとうございます。これから続き、読みに行って参ります！ (10月15日 5時) (レス) id: 354ea7a522 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 随所笑えるシーンがあって、とても楽しかったです。優勝杯のシーン、かわいそうだな…と思っていたので納得です！主人公ちゃんがとても好きで、ドラコとの絡みがますます楽しみです。 (10月15日 5時) (レス) id: 354ea7a522 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つき | 作成日時：2023年8月24日 11時
