素敵なクリスマス ページ18
「ま、待って……ファーストダンスの相手が私で良いの？」
おずおずと不安げに上目遣いで問うてくるAにドラコはさらりと返した。
「──むしろ、君以外は嫌だが？」
その言葉にAの心が波打つ。吸い込まれそうなほど綺麗な銀鉱石の瞳がドラコを見上げたとき、Aが彼の耳元で囁いた。
「嬉しいわね。リードしてあげましょうか、お坊ちゃま」
「僕のステップについてこれるかな、お嬢様」
いつもの勝気な笑みにドラコはニヤリと微笑んだ。
ダンスの始まり、ドラコはAの滑らかな手の甲に口付けを落とすと腕を腰に回し、そっとAは彼の肩に手を置く。
ワン、ツ、スリー。ステップを踏み始めればダンスが始まる。優雅に動きに合わせて純白のドレスが花弁のように舞う。
ふわりと天使のように舞うAを抱きとめるドラコの腕、密着する互いの身体。
自分を抱くドラコの腕は思ったよりもしっかりとしていて、Aの鼓動が不覚にも速くなる。
触れた手の火照り、絡み合う二人の熱い視線。二人だけの世界が出来上がっていた。二人をきらきらと光が照らす。
「なんて、美しい………」
「お似合いだ」
感嘆めいた呟きを招待客やマルフォイ夫妻は漏らす。
二人は至極、息のあったワルツを踊っていたがドラコは時々自己中心的な動きをしてきた。
それを見破られないように、ドラコに小馬鹿にされないようにその度に、Aは優美に微笑んでカバーするとやり返しに大胆にステップを踏んでみせた。
焦ったようにするドラコを見て整った顔をくしゃりと破顔して楽しそうにするAに、ドラコは胸を高鳴らせた。
「まぁまぁ及第点だな」
「私を誰と思ってるの？ 天下のヴィトグレーデよ」
私は誘ってやるぞじゃ踊れない相手なんだから、と悪戯げに笑うAの横顔をドラコは不安げに揺れる眼差しで見つめた。
「………次もこの先も僕と踊ってくれ。君以外は嫌になった」
一生だと言うようなプロポーズに似たその言葉にどくんと胸が跳ね上がる。そして大して考えもせずAは熱に浮かれて頷いてしまう。
何年後にこのやり取りを後悔することになるのをAはまだ知らない。Aだけを映す曇天の瞳が優しく煌めく。
「言ったからな？ 天下のヴィトグレーデに二言は無いよな？」
「はいはい、マルフォイお坊ちゃんの仰せのままに」
約束だと小指を絡めてくるドラコは真っ赤な顔をしてさぞ嬉しそうに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つき(プロフ) - くらげさん» 楽しんでもらえてとっても嬉しいです！！優勝杯のシーン、共感して貰えて何よりです……スリザリン強火オタクの叫びを受け止めてくれてありがとうございます！！ 性格がキツめな夢主ちゃんのことを好きだとは……感謝です！ ドラコとの絡み、私も楽しみです〜 (10月15日 13時) (
レス) id: cbccae9c94 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - くらげさん» コメントありがとうございますっ！書籍化希望だなんて嬉しいです〜これからも楽しんで読んでもられるように頑張って続き書いて行きますね〜！ (10月15日 13時) (レス) id: cbccae9c94 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 真剣に書籍化希望です笑 素敵な作品をありがとうございます。これから続き、読みに行って参ります！ (10月15日 5時) (レス) id: 354ea7a522 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 随所笑えるシーンがあって、とても楽しかったです。優勝杯のシーン、かわいそうだな…と思っていたので納得です！主人公ちゃんがとても好きで、ドラコとの絡みがますます楽しみです。 (10月15日 5時) (レス) id: 354ea7a522 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つき | 作成日時：2023年8月24日 11時
