参【不死川実弥】 ページ3
穏やかな陽光に照らされる蝶屋敷。
その中庭では屋敷の主人である胡蝶しのぶの声が響いていた。
「ほら、こっちですよ。炭治郎くん。」
手に持った白い布をふわりと風になびかせたしのぶは後ろを振り返りながら微笑む。
その視線の先にいるのは1人の少年だった。
少年は小さな手のひらを必死に伸ばし て布をつかもうとする。
その姿は愛らしく、しのぶにとっていつまでも眺めていたいものであった。
…が、現実はそう上手くはいかない。
少年の手が白い布を掴んだその瞬間。
少年…炭治郎の体はひょい、と持ち上げられてしまった。
「お早い到着ですね、残念です。」
中庭に現れて早々に炭治郎を連れ去ろうとするその人物を見たしのぶははぁ…とため息をついた。
「はぁん?普通だろぉ?んなに早くもねぇよ。」
しのぶにため息をつかれたその男…不死川 実弥が反論の声を上げる。
そう、彼こそが本日の炭治郎の世話柱であった。
炭治郎との時間が終わったことにより、肩を落とすしのぶを横目に持ち上げた炭治郎をすっぽり腕の中に収めた実弥は、ひらひらと手を振り蝶屋敷を出ようとした。
「ちょっと、不死川さん。忘れてませんよね?」
「あぁん?忘れてねぇよ。あれだろ?…炭治郎には今記憶がねぇ、ってやつ。」
実弥が炭治郎の顔を覗き込むと、実弥の腕をぺたぺたと触っていた炭治郎は不思議そうに首を傾げる。
その仕草は五歳の幼児そのものであった。
「そうです。彼の記憶は五歳ほどの頃のものに戻っています。…それが、どういうことか分かりますか?」
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作者名:むい | 作成日時:2023年9月21日 16時