5話By朱菜@�� ページ8
翌日の夕刻。いつも通り太宰を川から引き上げた俺は、気にかけていたことを問いかけた。
「……あんなガキが継げると手前は本気で思ってんのか？」
「どういう意味？」
「彼奴に荒事をこなせるだけの度胸があるか？幾ら異能が強かろうが、使いこなせるだけの技量と度胸がなきゃ意味がねェ」
「そうだねえ」
大して気にしていない様子の太宰に眉を寄せる。一体何を考えているのか……芝生から立ち上がった太宰は、近くにあった橋の陰から紙袋を取り出した。
「……何だそれ」
「何だと思う？」
……碌なこと考えてやがらねェな。被害に遭うのは俺か、それとも国木田か───どちらにせよ、面倒は避けられないな。
そう確信し杞憂に思う俺を他所に、奴は呑気に歩き出す。社への帰路だと思いきや、太宰は階段を素通りする。その先にあるのは……喫茶うずまきだ。
入口の窓硝子に目を擦る国木田の姿が見え、次なる
「それは私の合図さ〜♪」
「うわあああ！」
……早速犠牲者が一人出た。最早見慣れたとも云える光景にこめかみを押さえ溜息を零す。
「いやあ、いつ聞いても国木田君の悲鳴は素敵だねえ。その反応、寿命が縮まっていくのが肉眼で見えるかのようだよ」
「……やめてやれ」
流れるように注文と着席を済ませた太宰に国木田が手負いの獣のような引け腰で尋ねる。
「太宰……お前、何をしに来た」
「え？それは勿論、国木田君の寿命を軽く縮めに」
言葉が全て云い切られる事は無い。国木田が云わせまいと首を掴んで揺すり始めたのだ。
相手にするだけ無駄と割り切り、注文した紅茶を口に運ぶ。
「お前はっ！どれだけ俺に苦労を掛ければっ！気がっ！俺がっ！どれだけっ！」
「うへははははは」
「ま───まあお二人とも、店内ですから」
「諦めろ谷崎、無駄だ」
谷崎はそんなあ、と情けない声を漏らすが、最早このうずまきの常連にとっても日常風景だ。宥めようとすれば此方が被害を被ることになるのは厭というほど理解している。
「確かに、太宰さんに関しては中也さんと喧嘩した方が面倒ですけど……」
「何か云ったか？」
「否、何でも」
「お前は自由すぎだ！今日もこんな時間になってから顔を見せおって───」
最早小言ではなく恨み言を叫ぶ国木田に楽しげに揺られる太宰、居心地の悪げな顔をする谷崎、それをにこやかに見守る常連客。
混沌極まる店内に再び溜息をついた。
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黒洞揚羽(プロフ) - 鈴桜さん» わわわ！こっちの作品まで来てくれたんですね！！！ありがとうございます！頑張りますね！ (2020年6月11日 21時) (
レス) id: 6ab151bc47 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - 凄く面白いです！続き頑張って下さい (2020年6月11日 21時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朱菜＠�� x他2人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時：2020年5月17日 16時
