過剰摂取【佐野万次郎】

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「マイキー君！昨日スーパーでマイキー君のお姉さんに会ったんです」

タケミっちが嬉しそうに報告してきたからなんだろうと思えば

「すごい綺麗な人っすね！」

「だろ？絶対手出すなよ。手ェ出したら殺すからな」

「う、うっす」

もちろんAのことを褒めてもらう機会もそう少なくない。

読書家のAは頭がいいため、「お前の姉さんすげえな」と言われることは割と多い方だ。

でも、Aは俺のAだから。

「必要以上Aとは関わるなタケミっち」

「なんでマイキー君はそんなにお姉さんにこと...」

「当たり前じゃん。Aは俺の片割れだから」

片割れなんて単純な理由におさまるはずのないソレは多分庇護欲から派生した歪んだ感情で

まるで姉弟愛だと語るけど、そんな感動的なものではない。


「ねー、みてケンチン。Aからメール♡『早く帰ってきてね』だって〜！」

「集会も切り上げていいだろ。早く帰ってやれよ」

「当たり前じゃん」

＿＿＿＿＿

部屋に置いてある兄さんの写真をぼうっと眺めた。

万次郎がどれだけ兄さんと似ていたとしても、万次郎は兄さんではない。

写真からもヒシヒシと万次郎との違いが伝わってくる。

「兄さん。もっっっと話したかったなあ」

亡くなったすぐ後よりは気持ちも楽になったけど、消化しきれないモヤモヤが心にあって、辛くないと言えば嘘になる。

髪の毛の色も染め直して、まるで髪の色が抜けてしまったことなんてなかったことのようだったけど

正直ズルズルと辛さを引きずっている。

そんな辛さによって万次郎と私の間に呪いのような関係が出来上がってしまった。

呪いといえば聞こえが悪い。きっと言い直すならば「共依存」。

悪いものだってわかっているけれど、辛さを乗り越えきれない私はその関係が気持ちいいんだ。

「早く帰ってきてね」

万次郎に一件メールを送信して、布団にくるまった。


いつか呪いが解けて、私の片割れが私という枷を捨てて幸せになる日が来ることを願ってる。

きっと呪いの解ける日、私は辛いのだろうけどね。

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