色々詰め込んだ短編

無色無臭男子 ページ3

俺の存在感はヤバイ。

天性の影の薄さと香りの無さが極まって無色無臭男子。

因みに影の薄さをわかりやすく言うと100人中0.03人しか気付かないレベルにヤバイ。

いや、もうヤバイってレベルじゃないマジ、ヤ☆バ☆イ。

実は一週間前に両親が消えた。
両親共々影が薄いし俺も時々見失う。だから二〜三日姿が見えないなんてザラにあるわけだ。

だが、二週間も姿が見えないなんて事は無かったし、もしや事件にでも巻き込まれているのかとか……考えてやめた。白骨化すれば見つかるだろうし、そんな事より俺は自分の今の人生が心配なんだ。

家にあるもので食い繋いでいたけど流石にそこ尽きた。ってことで俺はヤバイ。万引きしようかと思うぐらいにヤバイ。

なーに、こんだけ影が薄いんだきっと防犯カメラにさえ引っ掛からないさ！

なんて、悪魔の声が聞こえるぐらいヤバイ。

え、バイトしろって？ 無理無理無理無理×一兆円！ もう一度言うけど俺、無色無臭男子。バイトの面接受からない以前に認識されない。目の前にいるのに気付かれない！

ヤバイヤバイヤバイ。悪魔が囁く、犯罪犯せって、ヤバイ……。


天気のいい日、黙々と野草を毟っていると声が聞こえた。

「二酸化炭素か？」

寂しさの余り幻聴が聞こえるようになったらしい。ヤバイ、俺ヤバイ。

「何やってんだよ」

現実逃避していると乱暴に肩を掴まれ相手の顔が視界に入る。

「植物型光合成！」

何をしているかはお茶を濁させてもらった。だって、野草をいただいていたなんて言えないだろ。一応プライドぐらい……あるとは言い切れないのが悲しい。

別にいいんだけどさ、うん。どうせスーパー無色無臭男子の俺は早々人目につかないし

うん。その話は辛いからやめるとして、植物型光合成は俺を見れる数少ない奴だ。

久しぶりに誰かの視界に映れた。それだけじゃなく話もした。

誰かと喋れるってなんて素晴らしいんだ！

なんてセンチメンタルになってると一人テレビに向かって話してた5日前の古傷が疼きだした。ヤバイ。

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