ポンコツ役者の見物 〜皇天馬〜 ページ9
これは、現実だろうか。
オレと太一は、今目の前で起きた出来事に呆然とした。
「て、天チャン…これは、現実…ッスよね？」
「おおお、お、オレに聞くなよ！」
対向の歩道で、とある騒ぎが起きた。
何が原因かは知らないが、どこかの男がアイドルを狙っていたらしい。
そのアイドル、桃色の髪をした方はモデルの仕事で顔を合わせたことがある。
同じ現場ではなかったから、ひたすら生意気ってことしか分からなかったが。
ただ、オレたちが目にしたのは『Aが刃物男をブッ飛ばした』ということ。
太一と顔を見合わせると、互いの頬をつねっていた。
「い、痛いッス〜！！！」
「騒ぐな！…現実か」
もう一度顔を見合わせると、まとめて声を上げて驚いた。
普段、ギターか紙とペンかフライパンしか持っていないあのAが。
どこかで、喧嘩が強いっていうのは聞いたことがあった。
でも、嘘だとも思っていた。
「Aチャンって…凄いッスね！！！」
どこぞの小さな名探偵が謎を解いたときのように、太一が言う。
純粋に、その行動を憧れに似た目で見ていた。
「あぁ、そうだな」
オレも、凄いと思った。
どんなに良い演技ができても、それは演技でしかない。
ああいうシーンを、ドラマで撮ったことがあるが実際の場面の話は別だ。
オレなら怖くて、その場から一歩も動けないと思う。
それなのに、Aは臆することもせず、淡々と男を倒した。
衝撃を受けたドラマや舞台のワンシーンなら、いくらでもある。
現実でそれを見たのは初めてで、オレはこの光景を忘れないだろうと直感した。
いつも、オレの演技に見入って慕ってくれるAとは思えないほどの格好良さ。
「ああいう演技、オレも出来たら良いのにな…」
「天チャンまさか…嫉妬ッスか？」
「は？？？」
「じょ、冗談ッスよ…」
そんな蔑んだ目で見ないでくださいッス、なんて言う太一も数秒後にはAに弟子入りする、と変なスイッチが入ったようだ。
弟子入り、か。
かく言うオレも、満更ではなかった。
2019/11/21
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伊織するめ(旧琥珀ねっと。) - 一人称だったりを俺がよく間違えてしまうので、気づいたら真っ先にコメントください。早急に直します。マジお願いします。 (2019年11月14日 23時) (
レス) id: 05f96ece9f (このIDを非表示/違反報告)
琥珀ねっと。 - なふなふさん» 本当ですね…！ご指摘ありがとうございます！ (2019年7月23日 9時) (レス) id: fcb415672d (このIDを非表示/違反報告)
なふなふ(プロフ) - 主人公の名前を変更するのは（名前）で変更出来ます。それと、立花監督さんの名前は「つぐみ」ではなくて「いずみ」です。次の更新、楽しみにしています。 (2019年7月23日 8時) (レス) id: 6391fe03a8 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀ねっと。 - 誹謗中傷等はお控えいただきたいですが…指摘やこういうのはやめてほしいというのがあればできる限りの範囲で対処するので遠慮なく投げてください…。 (2019年7月22日 1時) (レス) id: ac50ad53a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊織するめ | 作成日時：2019年7月4日 1時
