第1話 落とされた爆弾 ページ3
あれから1ヶ月後、入学式。
「おい、落としたよ」
校舎前でおそらく私に話しかけたであろう人物を見た。
彼が手に持っているのは、新入生代表スピーチの台本。
台本と言ってもただのメモ書きなんだけど。
「ありがとうございます」
とりあえずは愛想よく受け取っておく。
見たもの、聞いたもの、感じたものは忘れない人間だ。
いらないといえば、いらないんだけどね。
「それにしても、女子用の制服……本物は、初めて見たな。
20年ぶりに女の子が入ってくるってのは本当だったのか。
しかも代表とは、たいしたもんだね」
「そうでもないですよ。
私が女だからって理由もあるでしょうし」
「それって…」
「それでは、失礼します」
あの人は確か、なんとかってグループの青柳帝さんだよね？
だめだ、横文字が覚えらんない。
念願叶い、目指した学園で学べる喜びと少しの不安。
声優への道の第一歩、スタート地点。
私は意気揚々と学校までの道のりを歩いた。
＿＿＿のだけれど。
「すっごいざわざわしてるね〜」
「無理もないわ。今の話、控えめに言って爆弾だろ」
全校集会、普通は体育館だけどここは普通ではないのでどういうわけかドームの中。
そんな始業式の中落っことされた爆弾。
控えめに言って爆弾なら、大袈裟に言って原爆かな？
そういうこと言っちゃいけないよね、自重します。
「えー、大事なことなのでもう一度言う。
本校は廃校の危機に瀕している」
まぁ、そうでしょう。
私がこの学園を選んだのは、養成所でチラシを見たからだ。
見た上で言わせてもらうが、宝石が丘は漠然と歴史ある伝統的なすげぇとこ。
それだけだ。
ここが既に共学だったら、私はまず受けていない。
そんな漠然とした印象だけで、全然売り出していないのであれば、埋もれて当然。
それにしてもここまでとは思っていなかったけど。
「改めて、病欠の学園長に代わり
情感たっぷりに読めと台本をお預かりした荒木だ。
以後よろしく……えー、ウホン」
おそらく教師なのだろう、彼は荒木冴。
結構前から名を聞く有名声優だ。
明らかに雰囲気が変わったのでそれこそ情感たっぷりに読むつもりだろう。
こんなことを言ってはあれだが、これただの声優の無駄遣いでは。
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作者名：伊織するめ | 作成日時：2019年9月6日 0時
