第32話 ページ33
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『お世話になりました。もう家の事は善いですから』
呼び止めた俺に対して振り向かないA、その冷たい声はまるで全てを突き放すみたいで。
けど少し、何時もの強気とは別物だ。
「はぁーい終了、じゃあね中也」
繋がれた手。それを拒まない手。
そして全てを見透かして確信した上の、太宰の生き生きとした笑顔。
嗚呼、腹が立つ。
握られた拳には今にも殴り掛からんばかりの力が込められている。
「____嘘、だよ」
腹立たしかった。けど、立場が狭すぎて、全て図星過ぎて、それが太宰の思惑通りで情けねェの一点張りなンだよ。
自分でも判る位に小さく弱々しい声がワナワナと震えてる。
「俺に婚約者なンて居ねェし、それにさっきのは、その……恥、ず、…かし、くて…_____ああもう!」
顔をぶんぶんと横に振った
ああ、こンな事、本人の目の前で云うモンじゃねェッて判ってるし俺だって云いたくねェよ。
けど。
太宰に掴まれたのと逆の手首をひいて少し俯く。
「さっきのは!だから、……、
…太宰に嫉妬して、少し意地悪し過ぎた…」
話すにつれて小さくなる声に比例して、顔までもが徐々に、赤く赤く蒸気した。片手で口元を抑える。
そして数秒後、自分が何を放ったのか気付いた。
「だッ、違ェよ!手前に少し見蕩れてたッてのもあるしだ、第一なァ!朝あンな顔されて出ていかれちゃ俺だってどうすれば善いか」
『ううう五月蝿いです!!もう煩い!』
結果爆発。
吹っ切れた声色。
何故か涙目のAは振り返って、真っ赤な顔をこちらに向けていた。
『よく恥ずかしげも無くそんな事云』
「ッ、だああ!今こっち見んな!」
Aの顔に帽子を押し付ける。
ああ、糞、いつの間に消えた太宰のドヤ顔が目に浮かぶ。
「……善い訳ねェだろ、」
家の事はもう善い、と云ったAの言葉を思い出してボソリと呟いた。
まだ何にも弁償出来てねェのに、その上俺の嫉妬も虚栄心も全部Aのせいだッてのに
「勝手に去るな、
こうなった俺の分の責任も……ちゃんと取れよな」
目線を逸らしたまま首に手を宛がった。
あの時もさっきも
ただ見栄張ッて平然なフリしてた、なンて
「(……死んでも云えるかよ、)」
ちらりと目前を見遣る。
帽子を顔に押し付けられたままのAは硬直していた_____のに、
『な、かはらさん、』
帽子に籠る声は確りと俺を呼んだ。
震えた声と、艶やかな髪から覗く赤い耳
_____詰まりそれはさ
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レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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