第10話 ページ11
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「……っ!!」
洋服の物陰で口元を抑えられた
中原サンは冷や汗をかきながら、シーッ!!!と、空いた片手で人差し指を立てる。
咄嗟に手が出たようだ。
予想外の出来事に顔を強ばらせ、必死の形相で私を見詰めている。
「中原幹部?どうされました?」
「あ?はは、いや、何でもねェよ」
何でもない割りには引き攣った口元だなあ、と口を通気性のない手袋で抑えられ私はそろそろ死にそうだから早く離せこの野郎。と思いつつ。
「そうですか。では引き続き善いお買い物を」
「ああ、ありがとな」
店内で部下を一蹴する発言をし、何をホッとしたのか。胸を撫で下ろした後、不味い、と気づいた様にハッとして手を離された。
「わ、悪い!」
『はあっ』
飛び退く様にして伺う中原サン。
悪いと思うなら初めからやるな。と、新鮮な空気をめいいっぱい吸い込んだ。
『…何なんです?粋なり』
そう。あんな行動に意味が無い訳が無い。
中原サンはキョロキョロ辺りを見渡して、体位を低くしてから声を潜めた。
もじもじしていてなんだか気持ち悪い。
「……頼むから、俺が手前の家を吹き飛ばした事はどうか内密にしてくれねェか」
『ふうん?何故』
確かに公に出来る事ではないけど。
中原サンはわなわなと、小さく「笑われる」と、
そう一言云った。
この青ざめ様。何か体験した事のある言動。
何だろう。友達に悪魔でもいるのかな…なんて
にしても
『中原サン』
「何だ」
『真逆幹部が民間人の家を吹き飛ば』
ひゅっ、と息の音。手が出てきた。
それを避ければ、焦りと必死さで息を乱れさせ、中原サンは驚愕の表情で口を震わせる。
にしても_________________これは使えるな。
「お願いだからやめてくれ…」
そう嘆く中原サンを横目に、上の空で腕を組んでふわりとした口調で呟いてみる。
『いやあ、思い出した。
私ちょっと欲しい物があったんだっけなあ』
「今から買ってくる」
『昔から召使いを雇うのが夢でね。あ、マフィアの幹部とかいいな』
「俺がなるから」
『人生で一度はミシュランシェフのフルコースを口にしたいよね』
「明日にでも予約するか」
汗を拭ってぜいぜいと呼吸をする中原サン。
そっかそっか、そういう事か
思わず笑みが零れる。
約束しよう。他言しないよ。
中原にAの満開な清々しい笑顔が向けられた
絶対の言葉。絶対の笑顔。
「はは、はは…」
中原も釣られて笑う。
その目は、天を仰いでいた。
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レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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