雨 ページ35
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「______異能特務科が、ですか?」
「そう。秘匿である内務省の彼らの中で中々、最近噂になっている子が居てねえ」
見張りはどうかね?
そんな笑顔で執務室に呼ばれた俺は、そのままそっくり首領に問いかけた。
“異能特務科”
以前ポートマフィアとも関わりのあった国内組織で、極有数の異能力組織でもある。
俺が見張りの任務を担って数日、ガラス張りのヨコハマは久しぶりだ。
「____その子は日外Aちゃん、って云ってね。異能特務科にしては珍しい若さで飛躍的な活躍を遂げ、そして____世にも奇妙な異能力を持つ新人エージェントだそうだよ」
「…日外」
聞いた事のない苗字だ
そんな事を思いながらまたもや復唱。
するとにこり、と笑われその珍しい苗字を口にした所で目が合った。それと同時に差し出されたのは____善く目にする茶封筒。
「これは」
「ああ、一度目に通して置くといいよ
彼女には要注意だからねえ。何やら、“どんなものでも反対にしてしまう”異能力を持つそうだから。
干渉されては堪らないだろう?それに異能特務科では最近、おかしな実験をしているとも云うじゃあないか
呉々も注意するんだよ」
*
「____失礼しました」
首を傾げながら執務室を出れば、既に廊下は雨独特の、あの香りで充満していた。
ちらりと窓の外を見遣って、それから夕立の起きそうな空を一瞥すれば、手の中の茶封筒は乾いた音を発した。
「(____彼奴は…、まァ来るだろ)」
小雨でも台風でも、それが激しい夕立でも。
「お疲れ様です!」。きっとそんな、何にも気にしてない笑顔で現れるさ。
そう思うとふっと笑みが零れちまった
傘は飛ばされそうだし、髪で顔は隠れるわスーツは濡れて体が冷えるわで。
莫迦だ______なんて思っても
やっぱり、どんな雨の中でもそれを待っている俺が居たりしてな。
「(…あーあ、手前のせいで雨が好きな変人になっちまったじゃねェか)」
長いエレベーターの中。
今日も今日とて見張りに行こうと、さて、首領直々の新人はどんな奴かと_____茶封筒に手を入れた。
それから出てきたのは二枚の紙だ
一枚目は、特務科での役割と謂わば個人情報で
二枚目は_______。
_______それを見た瞬間に、何かが崩れる音がした。
見覚えのある髪や瞳。
間違うはずの無い横顔。
見開かれた俺の目は、その事実を疑った。
夕立はすぐそこだった。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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