雨 ページ27
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ーーーー雨は、大嫌いだ。
走る。走る。走る。
新調した
雨はこんな時でも、鬱陶しく、騒々しく私の涙を荒らしてゆく。
「はぁっ、は、ァ」
喉が切り付けられている。
空気を吸い込む度に、それが肺に張り付く感覚が忌々しい。
何処までも走った。
仕事を終えて、その場から逃げる様に、離れる様にして横浜を、____土砂降りの中を、傘もささずに走っていた。
私は、______人を殺した。
初めての仕事での
上司の安吾さんは「僕達は医者ではないのですよ」とその冷たい口調で慰めてはくれたが
何で、だろうか
医者ではないから命は救えないのか？
医者であったら、あの子達を救えたのか？
あの場所に居た私だけが、救えたのではないのか？
どくり、と心臓から何かが溢れ出した。
嗚咽だ。嗚咽と共に私の中の毒が溢れ出す。
鉄の香りと部屋を染める夥しい赤が、脳裏に霞む
「…っごほ、何で、私、どうして、動か、なかっ…たの、」
何のための異能力だ。
誰のための異能力だ。
こんなの、必要無いじゃないか
こんなの、人殺しも同然だ。
足が縺れてその場に転ぶ___。
溜まった水溜りに浮かぶ顔は、雨に打たれて認識さえ出来ない。
濁った視界が歪む。
溢れ出す涙は、雨と混じって何が何だか分からなくて
びしょ濡れになってしまえ、と
この思いも一緒に流してしまえ、と
雨の冷たさを感じて顔を覆った。
誰も、この世界には居ない様だ
膝の痛みが、血の滲みで伝っていく。
溢れる涙を押さえつけたせいか
皮膚を擦り過ぎて目元の方が痛かった。
もう、嫌、だ
「_____おい、手前こんな所で…」
声が聞こえた
朦朧とする意識の中で呆然と、その聞き慣れない声に縋って顔を上げる
差された雨傘の下
雨空も跳ね除ける位に真っ青で、何処までも深く輝く二つの瞳。その瞳は見上げた私を見るなり驚いて、警戒していた、咎める口を止めた。
ああ、こんな所に人が居たんだ。
それは見苦しい事をしてしまったなあ…なんて、そう思って。
けどそれでも、
｢──ッたく、ンな所で泣いてちゃ風邪ひくぞ｣
｢……え？｣
まだ溢れる涙を甲で拭う。震える声が感嘆を一つ零して。その人は、そう云いながら私に傘を渡してそのまま腕を引いた。
｢見て見ぬ振りなんざ出来るかよ｣と呟いて
一つ溜息を吐きながら
どこか遠く、永遠に続く雨空を眺めていた。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…！ (2019年6月4日 16時) (
レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます！頑張ります！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます！そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね！コメントありがとうございました！！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…！少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました！ (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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