曇り ページ22
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ーー【反転】
それが私の異能に授けられた簡潔かつシンプルな至って分かりやすく──────凶悪な力である。
「本当に此処でマフィアの取引が行われているんですか?」
「ええ。事前調査通りでは、ですけどね」
目的地についたのか、路地裏に停車してから安吾さんの部下さんがシートベルトを外したので同時に車を降りると、其処には薄暗い港倉庫が広がっていた。
おまけに天気のせいか少し気味が悪い______けど
「……日外君、何故目を輝かせているのですかね」
「え!?だっ、だって少しワクワクするじゃないですか!然もヨコハマにこんな所が合ったなんて!夜景とか絶対綺麗ですよ!」
何故か心は弾むばかり。
ヨコハマの湾岸沿いにある大きな倉庫街。
マフィアが占拠する此処は一般人なら尚更近づけない秘境でもあって……
「やっぱり好きだなあ、こういう所」
云い訳にもならない本心を云いきって、呆れる安吾さんの先導を切って歩き出した。
一歩踏み出す度に広がる雨の馨香。知らない景色。
辺り一面にはヨコハマ色に染められた湿っぽさが秘められていて。忽ち深呼吸すれば、それは冷たい空気と共に肺いっぱいに入ってきた
「はあー!気持ちいい!」
「はしゃぎすぎて転ばないで下さいよ、君は警視庁から大事な任務を請け負っているんですから」
「わーかーってますよー」
少し進めば海を背景にキラキラと輝く水の粒子達が視界を埋めて。その中で色づく赤い貿易船の汽笛が轟いて、三秒間、ヨコハマを揺らした。
鼻歌を歌いながら歩く。そうだ、
ーー私の異能力、【反転】と呼ばれた力の話でも整理しておこうか。
この力はその名の通り、この世の全ての
この世にはひとつ、何かがあればまたその逆の物が存在する。
白と黒、女と男、晴れと雨、生と死。
けれどそれらに限らず、
理論上対極線上に有らずともこの異能は発動する事が出来て、例えば
空と海、向き合う人と人、怒りっぽい性格、弱々しい性格。
対に位置しているものや極端なものは簡単に、その真逆の関係にあるものに変えてしまえるのだ。
全く恐ろしい力だな、と手のひらを見詰めると直ぐに空を見詰めた。
なら、雨が好きなら、その力で雨にすればいい
誰かにそう云われた事があるけどこの異能は自分の為に使った事は無い。
自分で仕組んだ雨で帽子さんに会ったって、馬鹿な私は素直に笑えないから。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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