第２７話 ページ27
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風に揺れた、相変わらず伸びっぱなしの蓬髪。
小さく呼吸をする心臓と繋がれた手が暖かくて。
すぐ目の前で太宰が少し首を傾げて微笑むから
釣られて私も、涙を滲ませ笑ってしまった。
『………仕方ないな。
朝はちゃんと、自分で起きてよね？』
嗚呼、何これ。変なの。
やっと目を合わせて会えたのに。
伝える言葉は好きでも愛しているでもなくて
恋と呼ぶには穢れ過ぎた、依存と呼ぶには烏滸がましい私達の複雑で厄介なおかしな関係。
だから、きっと多分。私達にはこれで充分なんだ。
「……う……まあ、努力はするよ」
『……あんた、真逆毎朝誰かに起こして貰ってる訳？』
「はは、今の職場に態々起こしてくれる人なんて居ないよ。 だから毎日遅刻してる」
『………それ許されるの……？』
「いいや」なんて得意げに笑って見せるけど、それ、笑い事じゃないからね？もう何歳だと思ってるの。呆れて溜息すら出ない。だから、溜息すら出ないから、代わりに、ふふ、と呆れた笑いが溢れ出す。
何だか懐かしいこの感じ。
太宰は背が伸びて、私もすっかり見た目が変わってしまったけれど、此処にあるものは同じ。この街みたいに、四年前と何も変わりはしない。
────�犁磴�時も怒られる時も歳を重ねる時も一緒だ。
独りで幸せになる事は許されない��
────�犹笋�いつも隣に居る��
繋がれた右手の先。
明るい砂色の長外套を翻して、私のキャリーケースを引きながら一歩前を歩く男が居る。
「如何したの？」
憎いけれど、また。全ては此奴の云う通りになった。
独りで幸せにはなれない。
離れる事も許されない。
此奴に初めて出会ったあの日。補佐になったあの日から───
最初から、幸せになる為に残された道はひとつだけだったんだ。
『……嗚呼、何かむかついてきた』
「なあに急に」
『全部あんたの所為だから』
「？」
『だから地獄まで、………もう、離したりしないでよ』
視界の端に、私の右手と包帯の手が映る。
五月蝿い空気がふっと消えた。
太宰が長い脚を止めて、振り返る。
「…………嘘」
『何』
「……ううん。判った。離さない。絶対離さないよ」
『……はいはい、どうも』
「絶対離さないから。絶対。一生」
『う、五月蝿い、判ったって…！！』
止まったままの脚の主を叱責するように見た。
「だって嬉しくてつい」と云い訳を零す太宰が荷物を離して顔を覆う。
そんな私達の頭上には、いつの間にか、月が輝いて居た。
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました！めっちゃ感動しました！ありがとうございました (3月26日 16時) (
レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
（3）(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです！！なずなの花言葉見て尊敬しました！素敵なお話をありがとうございました！！ (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした！並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました！完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました！ (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…！何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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