第１８話 ページ18
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─────自分よりも長い影が、脚元に伸びていた。
背後から訊こえた声に目を見開いて、息を止める。
じんわりと焼けるような橙が視界を焦がして居て。
ピタリ、と固まった身体。このまま振り返れば、其処に居る誰かの正体が判る。
─────善いの？
判ってしまったら、もう、戻れなくなる。
踵を返そうとした靴底。
音を立てた砂利が、私に訊く。
街の喧騒が遠くに聞こえた。
まるで私以外の世界が止まっているかのように、全神経が研ぎ澄まされて、呼吸が、浅くなる。
喉が渇いて、唾を呑み込んだ。
────その後。
『…………嗚呼、何で今』
今、微かに、何年も動かなかった筈の心臓が、音を立てた？
トクン、トクン、と息をする様に。
まだ小さいけれど、精一杯に脈を打って主張してる。
その度、胸が熱くなる。熱さを増して、感情が溢れ出る。
胸をぎゅっと掴んで息を吸う。
そう、気付いた頃には。身体は勝手に振り返って居て。
『───っ』
夕日が眩しくて前が見えない。
腕で光を遮って、ぎゅっと瞑った瞳を徐々に開ける。
そして、ゆっくりと明順応して行く視界で、真正面に立つ記憶を見た。
揺れる外套。
其処に居るのは、真っ黒な外套を羽織った、傷だらけで何処かあどけなさの残る青年。
ではなくて。
真っ黒に見えたのは。
ただ逆光と影で黒くなった、黒とは真反対の砂色の外套。
「───やァ、久しぶり」
少し大人びた、訊き覚えのある甘い声。
「君が名前を呼んでくれないから、忘れられたのかと思ったよ」
スラリと伸びた、見上げる程に高い背丈。
「だから少しだけ、意地悪をしたくなってさ」
その懐かしい口振りに、心臓が、痛い位に暴れ回ってしまう。
嗚呼、如何して。まるで最初から、私より先に知っていたかのような云い回し。如何して。何で？此奴なら。私の知っている此奴なら、私の事なんて忘れて居るのが当然の筈なのに。
「元気そうだね、A」
目の奥がチカチカした。
小さく開いた口で、息を、吸う。
『…………太、宰、』
「四年ぶり。私が居ない生活は如何だった？」
気道が狭くなって、脚がふらつく。目眩がする。
相変わらず屈託のない笑顔だ。全てを「四年ぶり」で片付けて、フラりと手を振っている。
太宰の胸には、キラリと輝く春の小川の様な
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました！めっちゃ感動しました！ありがとうございました (3月26日 16時) (
レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
（3）(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです！！なずなの花言葉見て尊敬しました！素敵なお話をありがとうございました！！ (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした！並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました！完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました！ (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…！何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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