第15話 ページ15
.
「あの───」
突然の気配に、ビクリと身体が強ばった。
気付けなかった事に驚きつつも咄嗟に振り返る。
「大丈夫ですか?」
肩に置かれた優しい手。
心配そうな顔を覗かせたのは、ピッタリと身を寄せ合う二人組の若い男女だった。
『……ああ、大丈夫です。休憩しているだけなので』
「そうは云ッても顔色が」
「そうですわよ。此処で倒れたら大変ですわ」
学生カップル───なのだろうか。
眉を下げた気弱そうな男の子とセーラー服を着用した黒髪の美人さん。余りに親切過ぎる二人に目が泳ぐ。と云うか、此方まで恥ずかしくなる位の密着度に目のやり場がない。
「この階段の上でしたら喜んでナオミ達がお手伝い致しますわ!ね、兄様!」
「うん。そうだね。丁度ボク達もそっちに用がありますし」
『ええ、善いの?ありがとう。……うん……?待ってね……えーと……兄様……?』
───「…はい」「はい!」。元気で可憐な声と控えめに照れた声が重なった。いや、真逆兄妹だとは。……兄妹?最近の兄妹は皆こうなのか。
追い付けない頭を抱えまた項垂れて居ると、左右に置いていた買い物袋が二つ地面から浮いた。
え、嘘でしょ。本当に持ってくれるの?
トウキョウじゃ倒れてる人が居ても素通りされるのに
このヨコハマは親切な人が多すぎやしないか。
「丁度三つですわね!持てますかしら…?」
「まだ体調が優れなかッたらボクが二つ……」
『いや!違うの、ただ感動して……』
即座に立ち上がった。
きょとんとした、全く似ていない二つの顔がふふと笑う。
────そして。
結局、マンションまで運ばせてしまった。
『───本っ当にごめんなさい。何とお礼を云ったら善いか』
「善いンです善いンです、気にしないで下さい」
「ええ、ただの親切心ですもの」
『いや悪いよ。確か用事があるって云ってたよね?』
此処まで付いて来てくれた兄妹───改め谷崎くんとナオミちゃんは「そうでしたわ」「あはは…まあ一応」とはっきりしない顔で腕を組んでいる。
「人を探していたンですけど」
「多分今もふらふらしていますから、私達が探さなくても帰って来ますわよ」
『でも……』
之は流石に引き下がれない。
二人の困った様な呆れ笑いに釣られて眉を下げれば、谷崎君が申し訳なさそうに口を開いた。
「じゃあ……もし見掛けたらで善いので、ボク達が探してたッて伝えて貰えると」
『うん勿論』
「えっと……特徴は───」
.
812人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空浮 - 気づいたら全部読み終わってました!めっちゃ感動しました!ありがとうございました (3月26日 16時) (レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
(3)(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです!!なずなの花言葉見て尊敬しました!素敵なお話をありがとうございました!! (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした!並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました!完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました! (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…!何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ