第２話 ページ2
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『────散歩。散歩ねえ……』
今さっき貰ったばかりの首領の言葉を思い出して、まるで初めて訊いた単語のように噛み砕きながら悩ませる頭。
長く続いた昇降機を降りて直ぐ、朝並んだ受付を通り、一旦腕を組みながら外へ出ようと試みた。
『………急な休暇も困るものよ』
然し、四年間休み無しで働いた頭────休暇の過ごし方を忘れた頭では、全くと云っていい程善い案が浮かばない。
上に戻って仮眠室に籠るか、地下牢のＱちゃんの様子でも見に行くか。うーんうーんと永遠に唸る私。
其れを止めたのは───
「…………Aさん？」
控えめな声。
脚を止めてくるりと振り返れば、黒衣を纏った痩身の青年が其所に居た。
『───芥川君』
相変わらず病弱そうな顔色をしている。
咳を抑えるように手を伏せる彼は、穴のように黒い瞳を更に丸くさせて会釈をした。
「帰って居られたのですか」
『今さっきね。久しぶり』
「お久しぶりです……」
まるで幽霊を見た様な目じゃないか。
芥川君にしては感情が剥き出しの表情。使い慣れた敬語。それに、後ろに金色の髪を纏めている女性を従えている。
『成長したね』
「あの、芥川先輩。この方は」
その女性がこそり、バツが悪そうに私を見詰めた。
芥川君は初め、何かを云おうとしたけれど、咄嗟に口を止め「否」と云い直す。
「お前になど、紹介するまでも……」
『あはは、買い被りすぎだよ。ただの補佐役なんだから』
「然し……」
何を懸念しているのか。ゴホゴホと咳込む芥川君を横目に、此方も心配そうに眉毛を八の字にさせた女性に笑いかける。
『四年前、少し縁が合ってお世話をして居ただけだよ。
芥川君とは何も無いから安心して？』
「えっ！？いや、あの、其ういう事では……！」
手を前に突き出して顔を真っ赤にさせる金髪の子。
之は中々時間がかかりそうな恋だな。
と、今正に現在進行形ではてなを浮かべる芥川君と彼女を交互に見て思う。全く微笑ましい限りだ。
『じゃあ、お邪魔だろうからもう行くね』
「ちょ、ちょっとお待ち下さい……！！」
「辞めろ樋口」
後ろで更に、ボンッと顔を赤くさせた音が聞こえる。
……首領直属の遊撃隊隊長か。
私も其所に就任していたら、こんな感じだったのかな。
そう、凸凹コンビにひらりと手を振り外に向かった。
『行くか』
一面強化硝子で出来た扉を跨ぐ。
息を吸い、目を開ければ。其所は────久しぶりの、ヨコハマの街だ。
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました！めっちゃ感動しました！ありがとうございました (3月26日 16時) (
レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
（3）(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです！！なずなの花言葉見て尊敬しました！素敵なお話をありがとうございました！！ (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした！並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました！完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました！ (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…！何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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