【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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先輩の家は五人家族で、彼女は三人兄弟の長女だと語った。


『高一の妹と中三の弟がいるんだけどね、その末っ子がどうしようもない悪たれでさ。夜な夜な遊び歩く、典型的な非行少年って奴？昨日、ソイツと色々揉めちゃって』


腕っぷしが強いことだけが取り柄のバカ野郎だから、喧嘩じゃ勝てないんだよね、と先輩は笑った。


『お風呂に入ろうとして、下着を持ってくるの忘れたから、部屋に取りに行ったら、ソイツが人の部屋を漁ってるの』

『は……？』

『びっくりしちゃうよね、人のお金を握り締めてんだから。「返して」って掴み掛かったんだけど、結局返り討ちにあって、この通り』


手首をさすり、苦笑いする先輩。

それはもう泥棒じゃねーか、と言えば、


『そう、アイツ、万引きやったりして、何度も警察にお世話になってるんだよね、補導もされてばっかだし。それでその度に私が迎えに行かされるの。どれだけ私や警察が注意しても、全然心に響いてないみたいで、同じ事ばっかり繰り返してる』

『親は……？』

『ああ、あの人達はもう私達のこと、ほったらかしてるから』


今まで見たことがないほど、空っぽな笑みだった。


『放任主義って言うのかな、何しても何も言わないの。良いことをしても、悪いことをしても、「へえ、そうなんだ」でそれでおしまい』


弟が非行に走るのも、親のそういった無関心な態度が原因だと思う、と先輩は言った。


『妹がね、高一なんだけど、猛勉強してるんだ。「東京の名門大学に入って、こんな家はさっさと出てってやる」って。「お姉ちゃんも、あんな奴等ほっといて勉強した方がいいよ」なんて偉そうにアドバイスまでしてくるし』


自分のことばっかりじゃなくて、もっと弟のこととか、家のことにも目を配ってほしいよね、と溜め息をついた後、


『ごめんね、変な話聞かせちゃって。聞いてて、気持ちのいいものじゃなかったでしょ？』


そう微笑む先輩は、本当に儚げで、俺は思わずこんなことを口走っていた。


『何かあったら、俺に言ってくれて構わねェから』


きょとんと目を見開く先輩に、恥ずかしくなって目を逸らしながらも、言葉を続けた。


『俺は勉強の出来ねェバカだけどよ、アンタと一緒に悩むぐらいのことは出来るし、それに高校上がるまでは剣道やってたし、もし不良とやり合うことになったら、戦力になれるだろうし……』


自分でも何が言いたいのか分からなくなり、言葉を詰まらせていると、先輩の笑い声がして。


『ありがとう、優しいんだね』


顔を上げると、泣き笑いのような表情をした先輩と目があった。

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