【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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俺という奴は、本当に恋の駆け引きとやらが苦手らしい。

なんとも愚かなことに、昨日の俺は先輩の大晦日をありがたく頂戴するのを忘れてしまったのだ。

今まで同様、さらっと誘えば良かったのに、別のことで頭がいっぱいだったせいで、そこまで気が回らなかったようだ。


……電話しよう。メールしよう。ラインしよう。


そう決心して電話帳を開いても、メールの作成画面を開いても、ラインのトーク画面を開いても、指は肝心のボタンをタップ出来ず、最終的に画面はブラックアウト。

こうして、決心しては志半ばで挫折する───というしょうもない動作を繰り返し続けた結果、日は沈んでしまった。


……先輩から来ねェかなァ、連絡。


と、他力本願になってしまったのだから、俺の中の男は死んだも同然。はてさて、墓前には何を備えてもらおうか。

大晦日を前に浮き足だったテレビ番組を眺めている間も、脳の八割は先輩のことを考えていた。




その日の夜は、案の定、全く睡魔が訪れなかった。

寝返りを何度も打ち、布団を頭から被ったりもしたが、効き目は全くなく、時計の秒針の音に焦燥感を掻き立てられた。

夜中の二時を回った後。

とうとう俺は、眠れないことに苛立ちを覚え始めた。

なんで眠れねェんだよ、と。

文字にすると間抜けすぎて笑ってしまうような台詞だが、その時の俺は全身の毛穴という毛穴からイライラオーラが出ているのではないかというほど、真剣にイライラしていた。

そして、そのイライラがピークに達した時、ついに俺は枕元にはべらせていたスマホを乱暴に掴んだ。

真っ暗闇の中、それを操作し、ためらいなく先輩に電話をかける。

二時半過ぎに電話。正気の沙汰ではなかった。

しかし、正気の沙汰でないのは向こうも同じだったらしい。

なんと、先輩本人が電話に出たのだ。

ちっとも眠くなさそうな、しかし不機嫌な声で。


『……もしもし、』

「俺だ、坂田だ」

『……は、』


不機嫌さが、驚きのためか和らいだ。

電話に出るとき、誰からのものか確認しないのだろうか。

そんなことを頭の片隅で考えながら、俺は平坦な声で、まるで喧嘩でも売るように用件を口にした。


「明日……っつーか、今日。年越ししたい。アンタと」


すぐには返事は聞こえなかった。


『……いいよ、』


沈黙の後の一言に、俺の全身が一気に弛緩した。

……これでやっと寝れる。


「じゃ、おやすみ」

『うん、いい夢を』


電話を切った途端、どっと睡魔の波が押し寄せてきて、俺は満ち足りた思いで瞼を閉じた。


あのときの俺は、やはりどうかしていたと思う。

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