【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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通話が切れたスマホ。

それを片手に納めた状態で、俺は布団の上に仰向けに倒れた。

大の字に両手両足を広げ、木目調の天井を見つめる。

視界の端に、高く積み上がったガラクタの山の頂点が入り込んでいた。


すっかり眠気が飛んでいるにも関わらず、俺は瞼を閉じ、少し前のやり取りを回想した。


『───北斗心軒……幾松殿の店で、年越し蕎麦パーチーをするのだが、貴様もどうだ？』

『他に坂本と高杉も招待してある。高杉からの返事はまだだが、坂本は酒を持って、参加するそうだ───』


同窓会も兼ねての忘年会。

何故、今になって同窓会なんぞを開こうとしているのか理解に苦しむが、アイツの行動は基本的に理解できないのだ。わざわざ首をかしげる必要はない。


『───は？来れぬだと？』

『───なんだ、貴様にも一丁前に年越しを共にする恋人が出来たか』

『む、違うのか。なら、どのような用事が───ええ？混み入った事情だと？ほう、是非とも詳しく聞かせてほしいものだな───』


当然、ヅラに先輩とのあれこれを赤裸々に語るつもりもなく、俺はのらりくらりとヤツの言葉をかわし、逃げるように電話を切った。

これは、後日会ったときに質問攻めされるのがオチだろう。

吐息を吐き、空の手を額に置いた。

脳裏に浮かんでいるのは、もちろん“混み入った事情”こと先輩のことだった。



『少し付き合って』の一言で、失恋パーティーというかヤケ酒というものに付き合うことになった俺。

先輩が正体を失ったらどうしよう、とヒヤヒヤしていたが、そんな俺の心配は杞憂に終わった。

先輩は慎ましく酒をあおり、例の元カレに対する愚痴をぽつりぽつりとこぼしただけで、泣き喚いたり、怒鳴り散らしたりすることはなかったのだ。

これは本人の談だが、元カレと決着がついたことで、張り詰めていた緊張が一気にほぐれ、その反動でありとあらゆる力が抜けてしまったらしい。


『昔も今も、坂田はそばにいてほしい時にちゃんといてくれるよね』。


駅までの道、しっかりとした足取りで歩を進めながら、不意に先輩が言った。

高校を出てから色んな人に出会ったけど、そんな人は坂田しかいなかった、と、まどろむような声で静かに紡いだ。


『坂田は無条件で甘いから、私が困っちゃうんだよ』。


冗談とも本気ともつかない台詞に、俺が困ったのは言うまでもない。

いや、過去形ではない。現在進行形だ。

現在進行形で、困っている。


恋愛が絡むと肝っ玉が小さくなる俺は、昨晩先輩の手を掴むことはおろか、触れることすらできなかった。

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