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とは言っても、やはり先輩を家に連れ込んだことに関しては記憶がはっきりしていなかった。
タクシーを降りて、二人三脚でエレベーターに乗って、鍵を渡したのは何となく覚えているのだが、その後のことは曖昧だ。
だが、そんなことは今、問題ではない。
……なんだ、あの嫉妬心まる出しの台詞は。恥ずかしすぎるだろ。黒歴史決定じゃねェか。
うわあ、と頭を抱えて俯く。
寝顔ですら、先輩を直視出来なかった。
と、くしゃみをした。俺ではなく、先輩が。
続いて、もぞもぞとソファーの上で動く気配が。
寝ぼけ眼をこすって、ソファーの上で身を起こした先輩に、俺はぎこちなく挨拶をした。
「……おはよーございます」
数秒間、先輩はぼんやりと俺を眺め、しきりに瞬きを繰り返していたが、突然目を見開き、
「……え……な、なんで坂田がうちにいるの……?」
「……いや、ここ、俺ん家」
一瞬の静寂の後、
「……おっしゃる通りでした……」
先刻の俺と同様、先輩は両手を額に当て、がくりと項垂れた。
そして、
「……坂田は昨日の記憶あるの?」
「……ああ、タクシー降りる前までは割とクリアに残ってるわ……」
「……それはご愁傷さま」
恥ずかしすぎる発言の数々をバッチリ覚えられていることが判明し、俺は顔に熱が集まるのを感じた。
先輩も下を向いていてくれたのが唯一の救いだ。
「……顔真っ赤」
「……一生のお願いだから顔を上げるな」
「……一生のお願いっていうか、一生の命令だね」
笑いを含む口調で言い、コート着たままだったんだ、と笑う。
「脱ぐ暇も与えず、ばたんきゅうだったもんね、坂田」
「え?」
「そっか、そこは覚えてないのか」
私を巻き沿いにして、ここにダイブしたんだよ、と先輩。
……やめてくれ、これ以上俺を辱しめないでくれ。
俺はさらに縮こまり、後悔しかねェ、と低くうめいた。
「……過去改ざんしてェ……」
「だめ。私は昨日の坂田に感謝してるんだから」
「気休めはよせよ」
「本当のことだよ。誰かが自分のことを真剣に考えてくれてるってだけで、ずいぶん救われるんだから」
「だから、それが気休めなんだって」
顔を上げ、口を尖らせる。
「俺に小っ恥ずかしい本音を言わせといて、自分は『感謝してる』なんつって取り繕って、その場をしのぐのは、ずりィよ」
思い切って言ってしまってから、言い過ぎたかと口をつぐんだ。
が、先輩は何も言わず、何か思案している表情で目を閉じた。
やがて、
「……そうだね、うん、決めた」
頷きながら、目を開けたのだった。
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Physics(プロフ) - ひなさん» ひなちゃん、ありがとう!!私も最近テスト前で低浮上だから、気にしないで!そう言ってもらえて、ハッピーエンドにして良かったって思えました(*^^*) 今後とも宜しくお願いします! (2018年2月25日 16時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最近ら低浮上だからお祝いのコメするのが遅れてしまった……(。ノωノ)ごめんね…最初から最後までドキドキしながら見てたよー。最後はハッピーエンドで終わって良かった!!私まで幸せになったよ!沢山のドキドキをありがとうございました! (2018年2月15日 22時) (レス) id: 843e6f4730 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 枕崎さん» ざっきー、ありがとうござりまする!設定を気に入ってもらえて嬉しいです、コーハイ銀さん美味しいですよね(^q^)オトナな銀八先生もクラっと来ちゃいますけどね!そして、素敵な愛の告白をありがとう!笑。もちろん私も大好きだぜ(*´∇`*) (2017年12月29日 21時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
枕崎(プロフ) - おめでとう、と言おうと思ってたら遅れてました(゚ロ゚)ぴーちゃん新作とかおめでとうございます!!私は銀さんを先輩として愛でたいタイプなのでこの設定めちゃんこ好みです!!応援しているので無理はしない程度に頑張ってね。貴女の事が大好きな女より(やめろ) (2017年12月29日 11時) (レス) id: 3bcc06a411 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - ひなさん» ありがとうございます!!さすが、ひなちゃんの脳内には銀さんが生きてるんですね!笑。これから色々深夜枠チックなことをしちゃったりしますが、楽しみに読んでいただけると嬉しいです!頑張りまーす! (2017年12月24日 21時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
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