【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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その店では酒を飲まずに料理だけ味わった。

私が頼んだマルゲリータと坂田の頼んだカルボナーラを、それぞれ二人分に分けて食べた。

つまり、私達はマルゲリータとカルボナーラを両方味わったということだ。

そこそこの値段だっただけあって、料理は文句のつけどころのない美味しさだった。

坂田は出てくるのが遅ェ、と子供のような文句を垂れていたが。



その後、私達はたまたま見つけた飲み屋にハシゴした。

そこは、イタリアンのお店から徒歩五分ほどの距離の、天井の低いシックな装いの飲み屋だった。

イブに私が連れて行ったバーに似た雰囲気を感じたので、坂田の好きな生ビールはないかと思ったが、意外にも酒の種類は豊富で、生ビールを始めとする庶民的なアルコールから、富裕層向けとおぼしき年代物のワインまで一式取り揃えられていた。

坂田はメニューを見るなり、生ビールを注文し、私はカクテルを注文した。

その後すぐに、甘いもの食いてェ、とチョコを追加注文したので、私も便乗してピーナッツを頼んだ。


「っし、じゃあ、一年間お疲れー」

「お疲れ様ー」


生ビールと、真っ青なカクテルで乾杯した。

同じ会社の者同士ではないから、「お疲れ様」と言うと、何だか違和感があった。


「あっと４日で正月だぜ、信じらんねェよ」


ビールを美味しそうに飲んでから、坂田が言った。

ピーナッツをつまみながら、頷く。


「今年もホントあっという間だったよ」

「来年も良いことあるといいよな」

「ん、なに、今年なにか良いことあったの？」

「ん、アンタにもう一度会えたこと」


発された言葉にプッと噴き出す。


「何その臭い台詞。ずいぶん柄じゃないこと言うねー」

「やっぱ、気障すぎた？」

「うん。これで、イタリア料理がスマートに注文出来たら、完璧なる紳士だった」


そりゃ一生かかっても無理だわ、と坂田はチョコを口に含み、それから顔をしかめた。


「なんだこれ、全然甘くねェんだけど」

「やっぱり？」

「知ってたなら、止めろよ」

「はは、ごめんごめん」


謝りながら、私もチョコを食べる。

かなりカカオ率が高いようだ、たしかに結構苦い。


「先輩は何か今年、良いことあった？」

「んー……」


今年を振り返ると、あの男のことばかり頭に浮かんだ。

そりゃそうだ、楽しかったことも、悲しかったことも、全部その男絡みのことなのだから。


「……結果的に悪いことばっかだったかな」


音にすると、その答えはいかにも虚しかった。


「……それって、大喧嘩したって奴のせい？」


坂田銀時は、図星をつく名人だ。

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