【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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坂田とどこまでも落ちていけたら良かった。

最近、ふとした瞬間にそう思う。

でも、当時の私は彼と共に落ちていくことを選ばなかった。


それは私達にはどうしようも出来ない“時間”ってもののせいで。

私がセンパイで、坂田がコーハイであるからだった。


好きになった時の自分は高三で、もし受験に失敗しなければ、半年も経たぬ内に地元を離れなければならない身で。

そして、受験に失敗する気はさらさらなくて。

───“遠距離恋愛”。

全く違う町で、全く違う生活を送る。会えるのは長期休暇など、ごく限られた期間だけ。携帯電話なんて持っているはずがない。

そんな関係の中で、果たしてこの想いを持ち続けられるのか。

私には力強く頷くまでの自信がなかった。


───お互いを嫌いになってしまうのなら。求めなくなってしまうのなら。

センパイとコーハイのまま。ほろ苦い青春のまま。

きれいな思い出として、そっと胸の内にしまって置く方がいい───。


そう考えた私は、東京行きの新幹線の中、これで良かったんだ、と涙を流した。

脳裏には卒業式の日の坂田の何か言いたげな眼差しが焼き付いていて。


『私、すごく坂田に救われてたの。……言葉にすると薄っぺらいけど、でも本当に感謝してる。本当に……本当にありがとう』。


自分は坂田の前では“イイ先輩”だったとは言えないだろう。

本来、相談に乗る立場なのに、私は逆に相談に乗ってもらったりしていたからだ。

でも、坂田は言った。


『俺も……いや、俺の方がずっとアンタに救われてたよ』。


坂田はお世辞なんて言う子じゃない。

それを知っているから、余計私は嬉しかった。

篠崎先輩としてではなく、篠崎Aとして、私は彼にとって意味のある存在になれていたのだ。

その事実がどうしようもなく嬉しくて、切なくて、泣きそうになったから、私は笑った。



───……その笑顔で私と坂田の関係は思い出になったと思っていたけれど。

タイムレコーダーを押して、定時通りオフィスを出た私は、エレベーターの中でスマホを取り出し、吐息をついた。


『今、終わったから、新宿の東口改札で待ってる』。


坂田からのLINEに対し、『今から行きます』と返す私。

相変わらず、私は坂田の前では“イイ先輩”にはなれないらしい。

もう一度、吐息を吐いた午後6時43分。

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