【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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昔から。

昔から、 私はこういう子だった。


親から貰えなかった称賛の声を、周囲からありったけ貰おうとするように、常に良い子であるよう努めてきた子だった。

先生から、友達から、先輩から、後輩から、「えらい」とか「すごい」とかそんな賛美の言葉を貰うために、文武両道を心掛けてきた子だった。

おかげで、推薦状を書いてあげよう、と言ってくれる先生や、憧れだと慕ってくれる後輩も出来たし、それに愛してくれる恋人も出来た。

誉められて、慕われて、愛されて、満足しているはずなのに、でも心はいつもがらんとしていた。

それは誰にも打ち明けられない悩みが生み出す、心の空白だった。



人から一目置かれる存在になっていくにつれて、私のプライドは高くなっていった。

そして私は、いつしか自分の悩みを打ち明けられなくなっていった。


家族のこと。将来への不安。突然押し寄せる寂しさ。


『娘がこれなんだもん、絶対和気あいあいとした明るい家なんでしょー？いいなあ、私、Aん家に生まれたかったよ』。

どうしてこの時、否定し、相談を持ち掛けなかったのか。


『篠崎先輩は何でも出来ちゃうから羨ましいです。あたしなんか、この前のテストがボロボロで……大学入れんのかなあって不安なんですよ』。

どうしてこの時、無理に先輩ぶったのか。


『お前って、いっつも楽しそうでいいよな。俺もお前ぐらいお気楽に生きてみたいよ』。

どうしてこの時、正直に悩みを打ち明けられなかったのか。


それはきっと、みんなに抱かせていた篠崎A像を壊すのが嫌で、そしてそれを私のプライドが許さなかったからだろう。

そんな馬鹿らしい理由で、ひた隠しにしてきた私の弱みを、しかし坂田銀時はあっさりと見破ってしまった。

見破り、そして力になろうとしてくれた。


……ホント、敵わない後輩だよ、坂田は。


放送委員で初めて会って、偶然にも当番が同じ曜日になって。

まず初めに、気だるげな話し方とか動きとかを見ていて、サボりそうな子だな、と思った。

それと同時に、弟と同じ匂いを感じて、私は彼に目をつけることにした。

そうして、あれこれ世話を焼く私に対して、彼が小さな反発すら見せなくなったのは、いつからか。

色んな話をするようになって、でもやっぱり私は悩みを打ち明けられなくて。


……それなのに、坂田は私の弱い部分を暴いた。


戸惑いもしたけど、同じくらい嬉しかった。

自分でも外せない、センパイの、優等生の、長女の鎧を外してくれる人が現れたことが。


───恋に落ちるくらい、嬉しかった。

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