【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

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弟は、昔からギターを弾いてみたかったのだという。

彼は有名なギタリストの名を挙げ、ソイツに憧れているのだと心底恥ずかしそうに語った。


『中学に入ってから、ギターを何本も持ってる奴と知り合って……ソイツん家で練習させてもらってる内に、サツに目ェつけられるようなことを「一緒にやろう」って誘われてさ』


ようするに、悪い友達と付き合い始めてしまったらしかった。


『よくねーことだとは分かってるけど、スゲー楽しいんだ。スリル感とかがクセになるっつーか……』


その内、弟はギターの練習料金を課せられるようになったという。

それを払うために、姉の金を盗もうとしたのか、と俺は納得した。


『……にしても不健康な遊び方だな。河原にでも行って、野球してこいよ、心が洗われるぞ』

『うっせーな、どうせ困るのは俺なんだから、別にいいだろ。俺がどうなろうが、誰も心配しやしねーしよ』

『あんなよく出来たねーちゃんを持っておきながら、何言ってんだよ』

『……へっ、俺が死んだら、Aは両手を上げて喜ぶさ』

『ホントひねてんなァ、お前』


散々迷惑を被らせたことを、悪ガキなりに気にしている風だった。


『心配いらねーよ、お前のねーちゃんはトゥルーラブを持ってお前に接してる。この目利きのいい俺が言うんだから、間違いねェ』

『は？とぅるー……？』

『お前、俺より偏差値低いだろ。勉強した方がいいぜ』


余計なお世話だ、と食って掛かる弟。

スパゲッティはきれいに無くなっていた。


『バイトしろ』

『な、なんだよ、いきなり……』

『バイトして、自分でギターを買え』


イチゴ牛乳を最後の一滴に至るまで飲み干し、俺は席を立った。


『その偏差値低そうなお前の悪友も誘って、一緒にバイトすりゃいいだろ。“年齢詐称してバイトってカッコよくね？”みたいな感じでさ。そっちの方が、まだ健康的だぜ』


弟は黙って、俺の話を聞いている。

伝票を抜き取り、最後に一言つけ加えた。


『篠崎先輩を、安心させてやってくれ』




その日、放課後まで外をぶらつき、それから家に帰ったら、担任から連絡がいっていたのか、松陽にこってり絞られた。


『最近はめっきりサボらなくなったと思って安心していたのに、またお前は……』


拳骨一つで玄関に埋められ、説教をされている俺を見たら、例の弟は失望するだろうか。

帰り際に向けられた真っ直ぐな眼差しを思い出し、そう考えてから、それでいいと思った。


『……松陽、いつもありがとうな』


普段の俺なら、絶対に言えないような一言が、その日はすんなりと出てきた。

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