焦りと不安と ページ29
さとみside
____Aちゃんが、倒れた
そう七瀬さんから連絡が入っていたのは30分前。
ちょうど打ち合わせ中で、気付かなかった。
スタッフに挨拶して、急いで外でタクシーを捕まえる。
七瀬さんに今から帰ります、と連絡をすれば、すぐに既読がついて、今眠ってるから、気を付けて帰ってきてね、と返信が来た。
それを確認して、小さく溜息をつく。
やっぱり、無理してたんじゃんか。
最近、何か焦ったように行動していることが多いように感じてはいた。
メンバーとのコラボ動画も、そうだ。
おかしいと、思っていたのに。
大丈夫、と言うから様子を見ていた、なんてただの言い訳だ。
「っ、くそ…」
守るって、何があっても側にいる、って約束したのに。
あの笑顔を、アイツの存在を、守りたいのに。
俺は結局、何もできて、ない。
そんな自分に、腹が立って仕方なかった。
運転手から到着の旨を告げられ、お金を払って降りる。
エレベーターが来る時間でさえ、遅く感じて、じれったい。
家の鍵を開けて、急いで靴を脱いで上がる。
寝てると言ってたから寝室か、とドアを開ければ、眠るAの側に腰掛けて、優しく頭を撫でる七瀬さんがいて。
苦しそうな寝顔でないことに、安堵した。
「お帰り。お疲れ様、早かったね?」
「ただいま。急いで帰ってきたので…七瀬さんいてくれて助かった。ありがとうございます」
「いーや、俺は何もできなかったから。………少し、話したいんだけどいいかな?」
「そんなことない、本当に助かりました。とりあえずリビング行きましょっか」
眠るAの頰を撫でると、手にすり寄って来る。無意識なのだろうその行動が、俺にとっては不安で怖いということを、きっと君は知らない。
もう一度頰を撫でてからリビングに向かえば、眉を八の字にしながら俺を見る七瀬さんに。
「適当に座ってて下さい。お茶かコーヒーどっちがいいです?」
「あ、じゃあコーヒーお願いしてもいいかな?」
「了解。Aみたいに淹れるの上手くないのは許して下さいよ」
「桃里くんのコーヒーも十分美味しいよ」
なにか飲み物、と話しかければ、少しぎこちないけど、いつもの優しい笑みを浮かべてくれた。
淹れたコーヒーを七瀬さんの前に置いて、向かい合うように座る。
先に口を開いたのは、彼だった。
焦りと不安と
(七瀬さんから伝えられた内容に)
(俺のこの前の嫌な予感が)
(当たってしまっていたことを)
(現実を、突き付けられた)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時