104話 ページ8
仕方なしと思い服の袖を引き千切って腕を縛る。止血とまではいかないがこれ以上は何もやれない。紫がジト目で俺を見てきた。
「あと少ししたら警察着くってさ。で、可哀想な子って何」
「あぁ、俺の親どっちも事故死でな。同情の目を何度も向けられてんだ
お前も知ってるだろ、喧嘩ばっかやってた俺のこと。お前らは意外と強かったが……パターン分かりやすいし倒しやすかった
俺も聞きたいことがある。俺がお前らをボコした日にAに八つ当たりしたろ」
俺が聞けば虫を噛み潰したような顔をする六人。顔も一緒なのが気持ち悪い。この顔じゃ図星か。
殴る気も体力も無い俺はボーッとした頭でそれを見続けた。
その時、俺のスマホが鳴り響いた。空いている手でスマホを出せばAからだった。
『ねぇ、大丈夫?夏希が外出てからパトカーとかのサイレンが凄いんだけど…』
「あぁー…大丈夫」
『……何か巻き込まれた?その声だと自分からではないね。何処にいるの?迎え行くからジッとしててよ?!』
「んで分かんだよ…ったく。いいよ、救急車、来るか、ら…」
スマホを持つ手から力が抜けて滑り落ちた。Aの声が徐々に小さく、遠くなっていく。
「ーーー!ーー?!」
うるせー…。遠くにサイレンの音も聞こえるし寝ても良いか。良いよな、うん。
「守れたなら、良かった…」
Aが俺みたいにならなくて良かった。そう思うと同時に俺の瞼も意識を繋ぐ意志も力を失った。
Noside
夏希が気を失って数分、警察と救急車がやって来てすぐに夏希は救急車に運ばれた。
繋がりっぱなしの夏希のスマホから救急隊員が連絡をする。病院と容態を伝える会話が漏れていた。
「東郷確保!至急、警視庁に連絡しろ!ほら、立て!」
「あーあ……あのクソガキが舐めたマネしやがって。あぁ、そうだ。松野おそ松くん?」
「…!!」
「夏希の言った通りだが、君の妹は何もしちゃいない。むしろ親に留守番を任せられるまでずっと一人で探していたさ
俺が拐ったのを知らずに助けを求めて来たのは傑作だったよ」
その下衆い笑みに凍りついたのは言うまでもない。
そしてその言葉を最後に東郷は警察に連行されていった。その姿が見えなくなるまで、六つ子は呆然としていた。
「……行くか」
「あい!」
「ちょ、どこに!?」
「病院。Aもいるだろうし」
「Aの歌聴けなくなるのやだもん!」
「…え?」
「……やっぱりか」
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yamaneko(プロフ) - この作品大好きです!更新待ってます! (2022年5月29日 17時) (レス) @page23 id: 07c8e63397 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 個人頑張ってください!一気に読んでもう…泣けてくるわ (2020年6月26日 0時) (レス) id: 754c695e6f (このIDを非表示/違反報告)
るるるs - 98話 天ノ弱を歌っているのはGUMIですよ。(少しばかりの訂正文失礼しました) (2020年6月1日 0時) (レス) id: 237a7189ae (このIDを非表示/違反報告)
Rain☆ - あと、この小説に出てくる歌い手さん全員大好きです!! (2020年5月11日 23時) (レス) id: 3af4d419c0 (このIDを非表示/違反報告)
Rain☆ - 1日で一曲目二曲目三曲目読んじゃいました!!!好きです!こういう深いの大好きなんです。更新頑張ってください!! (2020年5月11日 23時) (レス) id: 3af4d419c0 (このIDを非表示/違反報告)
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