【鬼滅の刃】扇は月下で煌めきて【童磨】

昔々　十六 ページ38

病的なまでに白い肌がどんどん紅くなっていくのを面白がった彼は、その時の状況をこと細かに話始めた。

「最初は女の声が煩くて目が覚めて、それで音の出所を辿ったら父上の部屋だったんだ。それで父上にお願いだから静かにしてほしいって言おうと思ったんだけど、行為中の独特な臭いとかみっともない声とかが鬱陶しくて、襖を開ける気にもなれないくらいで…」
「ぁぁぁあぁぁ煩い煩い！！わかった！状況は十分伝わったからこと細かに説明するな！！！」

彼の口を押さえつけて話すのを無理矢理やめさせ、暫く息を整えていたAだったが、不意にこう溢した。

「でも…そうか。両親が…これでお主も、独り、か……」

悲しげに呟いたAに、彼は何を思ったのか無邪気に笑うと、彼女の手を引き剥がしてこう言った。

「ううん、僕はそう思ってないよ。前から君のこと姉みたいに思ってたから！“姉上”がいれば全然寂しくないし、親の死なんてどうでもいいよ」
「…！」

それを聞いたAの目から涙が零れた。

「……あれ、“姉上”どうしたの？どうして泣いているんだい？」
「…泣いてない……泣いてなどおらぬのだ…ただ……ちょっと目に塵が入っただけだ…」

ありきたりな言い訳をしながら、Aはそっと彼を抱きしめた。

優しく、壊れないように。
宝物を守るように。

新しくできた弟を、Aは愛おしそうに抱きしめた。

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