b.05 ページ21
頭と感覚ふわふわしてる。
「…い」
あ、気持ち悪いかも。
「おーい？聞こえてる？」
『イデくん先輩』
「べろべろじゃん」
そう言えばいっぱいお酒を飲んだかも。
「もうラストオーダーだけどなんかある？」
『ないでsh…』
でも先輩も同じくらい飲んでたような。
お主もしかしなくてもザルか？
「じ、じゃあ拙者限定グッズ買ってくるんだけど君の購入枠も…いいデスカネ」
片手でOKのサインを作ると、彼は席を立っていった。
水を一口分喉に流し込んでみると、段々落ち着いてくる。
説明すると、最近アルコールの香りに慣れてきた飲酒初心者が調子に乗り案の定潰れていたということだ。
『こりゃやらかしたな〜』
酔っ払って変なことを話していないと良いけれど。
「お、顔つきが通常に戻ってますぞ」
グッズ購入を終えたイデア先輩が帰ってきた。
『正気に戻りました』
「戻らなくても良かったのに」
どういう意味だよ。
「満足したならそろそろお店出ます？会計終わってるからいつでも可ですぞ」
『え、いやお金私出しますよ。申し訳無いし』
あれだけ迷惑もかけたのだからむしろこちらが払わせて頂きたい。
「無理でーす。今日くらい先輩に格好つけさせて」
納得はできなかったが、じゃあ今度は私が出しますからね、と言い銭の押し付け合いは収束した。
パークを出ると、ちょうど月が出ていた。
暗いけれど晴れているなと空を仰いでいると横から声がした。
「A氏、一応確認なんだけどさ。僕ら交際してるんだよね？」
あぁ。
そういえば私この人と付き合ったんだっけ。
忘れてたよ。
そういえばそうだったと緊急脳内会議を展開しようとする私に先輩は続けた。
「じゃあ、こういうことも、許されるんだよね」
イデア先輩の手が私の頬を撫でた。
次の瞬間目の前が暗くなり、唇に何かが触れた。
それはとても優しくて、同時に冷たくもある。
そう思った。
なにをされたのか理解した時、顔がみるみる紅潮するのを感じた。
『ききき急になんてことするんですか！』
「君の”好き“も相当唐突だったし。これでチャラにしてやりますわ」
『それとこれは関係ないでしょうが』
「酔っ払いがなんか言ってるしww」
酔っ払って無いし。
ちゃんと歩けてるし。
「めっちゃ蛇行運転ですぞw」
結局道で転びまくるので家まで送ってもらったそうです。
記憶はありません。
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作者名：Matyu | 作成日時：2023年9月19日 21時
