b.03 ページ19
イルミネーションがぱっと灯く。
夕焼けの赤と私の血の赤のコントラストが何とも言えませんね。
……
『いやいや！ぼーっとしてても仕方ない』
そう思いたち、一旦靴擦れの度合いを確認してみた。
一日中歩きっぱなしだったから当然傷は深かったが、範囲で見ると大したことがない。
うーん見てみたは良いもののこれどうすりゃ良いんだ。
興味本位で傷をちょんちょんっと突いてみる。
痛みで悶絶。
もっかい突いてみる。
痛みで悶絶。
『ぐぉ…』
これは自業自得の極み。
呻き声を上げ膝を抱いていると、背後から声がした。
「ねぇ、A氏なにしてんの？！」
『え、先輩…？』
息を荒げたイデア・シュラウドが、そこにはいた。
そして私の前に回り込み、足を見やった。
「うわーグロ、なんでこんなになるまでなにも言わなかったの？」
そう呟くとハンカチを濡らしてきて、跪くと私の足に触れた。
ここでやっと状況を理解し我に帰る私。
『ちょちょちょっと待って自分で対処できますよ！』
「出来てないからこんなことになってるんでしょ」
『…でもハンカチも汚れちゃうし！』
私が言っても呆れた様にこちらに視線を送るのみで、容赦なく傷を拭きはじめる。
傷に沁みるのと申し訳無さとで顔を顰めると、
「沁みます？いたいのいたいの飛んでけー」
なんて言って、ふざける顔に夕日があたる。
ほんと生粋のお兄ちゃん気質だよね。
『…なんで先お店入ってなかったんですか』
「そりゃ心配ですよ。A氏この前も変な奴に押し入られてただなんてこともあるし尚更」
そうだ。
思えばどんな時も助けられている。
学生時代だってこうだった。
いつもはへにょへにょで無気力な先輩。
ムカつくことばっか言うしすぐに人を挑発する先輩。
その癖私が躓いたり、窮地に陥ると必ず助けてくれる先輩。
今だってきっと、私のことを探してきてくれたんでしょう？
私のことより推しコラボは大事だよ、時間勿体無いよ。
「絆創膏貼っとくから、大丈夫？立てる？」
なんであんたは絆創膏持ってんだよ。
長い指で足の甲をつうと撫でられる。
青く燃える髪は仄かな熱を持ち、潤うイエローアンバーの瞳は光を反射し輝く。
私にとってはどんなに煌めく星よりも美しい。
いつもは内気で、しかしいざという時は誰より頼れる貴方が、貴方の全部が、
『好き』
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作者名：Matyu | 作成日時：2023年9月19日 21時
