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エピソード5 ページ33

彼は無言で読み進めていく。
静かな部屋に、暫く(ページ)がめくれる音だけが響き、そして溶けるように消えていった。

少し気まずい雰囲気を脱する(ため)話しかけようとしたその時、丁度読み終えたヴィルさんが感心した口調で口を開いた。

ヴィ「…読み終わったわ。
…この絵本、絵柄がとてもキレイね……物語も面白いわ」

「で、ですよね!」

彼の褒め言葉に私は深く同意し、首を強く縦に振る。

「…まだ貧民街(スラム)に住んでいた頃、偶々(たまたま)この絵本を拾ったんです。
流石に文字は読めなくて、どんな物語なのかは判りませんでしたが……描かれてる絵だけを何回も何回も見返しました。

綺麗な髪に、綺麗な服に、美味しそうな食事に、ふかふかの寝具……泥にまみれ、明日の食い縁も生きていけるも知らない私にとって、其れは雲の上の生活でした。
それで、"私も将来はこんな素敵な人になりたい"と強く思い、その夢に近づけるよう、自分でも出来るような事から始めました」

背筋を伸ばし、ボサボサな髪なるべく整え、出来るだけ人に優しくし…。
本当に少しだが、少しずつ近づけるように。

兄様(あにさま)に拾われてからは、益々(ますます)拍車がかかりました。最初に文字を猛勉強して絵本の物語を読み込み、言葉遣いや人への呼び名をたくさん練習して、図書館でレッスンの本を借りてはその内容をちゃんと覚えて練習し……。特に力を入れたのは、マナーレッスンとお上品なカーテシーのやり方と……あと、綺麗な笑顔の作り方!
ある程度文字を読めるようになった時は、他の小説もたくさん読んで、より博識になろうともして!

…そうして、今の私がいるんです。
…全ては、あの時の感動を、忘れない為に」

何時の間にか、私は前のめりになってヴィルさんへ話しかけていた。


そう言えば、あの頃は敬語が難しくて、良く間違えたりしたなぁ……。

ヴィ「そうだったのね…」

ヴィルさんは優しそうな笑顔を浮かべる。

ヴィ「…もしかして、アナタの銃の腕が上手いというのは、その"憧れ"に関係しているのかしら?」

「はい!
…って言っても、絵本のお姫様の方では無く、拾ってくれた兄様(あにさま)に対してなんですけどね。
あの方は悪い人をやっつける仕事をしていて、その仕事で使われているのが拳銃なんです。
スッゴい腕前なんですよ!私なんて屁でもないくらい!もう兎に角かっこよくて!」

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布教する猫(プロフ) - タタリさんコメントありがとうございます…!オダサク最高!! (1月12日 22時) (レス) id: 0899319726 (このIDを非表示/違反報告)
タタリ - 夢主ちゃんとオダサクぱぱぁ、、、2人共幸せになってね、、、オダサク最高!! (1月12日 13時) (レス) id: cd26d993ce (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 恵@副垢(プロフ) - 星猫さん» えぇ....(困惑) (2022年11月20日 20時) (レス) id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 布教する猫さん» 文ストの好きなキャラは何ですか? (2021年9月18日 11時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 布教する猫さん» スラム同士で仲良くして良かったです!お気に入りしました! (2021年9月18日 10時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:布教する猫 | 作者ホームページ:nhatev-hdfs yue1  
作成日時:2021年4月3日 22時

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