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霊はいない。
真砂子にそう聞いた渋谷さんはそうですか、と小さく呟いて考え込んでいる。
リーダーが次の手を決めるまでは少し休憩かな、と思ったときだった。
旧校舎のどこからか、何かを叩く音と叫び声がした。
私達は一斉に周囲をうかがう。
「松崎さんの声と違うやろか…」
ジョンが言うと同時に、渋谷さんがモニターの群に一瞥をくれて、ラボを飛び出した。
ラボを出たところで階段を下りてきたお坊さんに会う。
「何だ、今の声は」
「分からない。一階のようだったが」
渋谷さんが言って、廊下を見渡す。
耳を澄ますと、西側から巫女さんの声が聞こえた。
駆けつけると、どうやら教室に閉じこめられているようで、お坊さんが扉を蹴破り、巫女さんを救出した。
渋谷さんに何があったのか問われた巫女さんは、いつの間にか戸が閉まって開かなくなったのだと言う。
「これで、この校舎に何かが居るってことははっきりしたわね」
巫女さんは偉そうに断定する。
そんなわけない、と真砂子を見ると、つん、と澄ました態度で
「ご自分で無意識のうちに閉めたんじゃありませんの」
と言ってのけた。
それを発端に言い争いが始まる。
あげく巫女さんは教室の中から声がしたと言い始めた。
『音なんて反響するものじゃないですか。実際に誰かが居たのを見た、と言うなら話は別ですけど、出所が分からない以上何とでも言えますよね?』
巫女さんは悔しそうに鼻を鳴らす。それから、ふっと深刻そうな顔をした。
「とにかく、あの部屋、変なのよ」
「変?」
「なんか変なの…巧く言えないんだけど。軽く目眩のする感じというか…妙に腰が落ち着かなくて、逃げ出したい感じがする…」
「そんなもの、出るという先入観のせいですわ」
「小娘は黙ってなさい。あたしは容姿で売ってる似非霊能者とは違うの」
「容姿をお褒めいただいて光栄ですわ」
巫女さんに突っかかられてそう言った真砂子は、少しだけ渋谷さんに似ていた。
それからまた巫女さん、お坊さんを中心に言い争いが始まる。
噛み合わないのは分かったから別の場所でやってくれないかなぁ。
みんなの話を流し聞いていると、巫女さんが言った。
「要は、祓い落とせって話でしょ?あたしは明日、除霊するわ」
…だから霊はいないって真砂子が言ってるんだけどな
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作者名:あんみつ x他1人 | 作成日時:2023年3月13日 18時