51話 ページ1
男の顔には、トランプが刺さっている。
まるでバターのようになめらかに切り込まれた男は、ただ醜い呻き声を上げ白目を向いて倒れ込んだ。
あまりの早業に周囲はしばらく困惑した沈黙に包まれたが、ある一人の男の笑い声にその方を振り返った。
「くっく♤なるほどなるほど♧」
ふとサトツを見れば、彼は同じく投げ込まれたトランプカードを見事その手に捕まえていた
彼はどうやら本物の試験官を割り出すため、殺気たっぷりの『試験』を行ったらしい。
「やだ気持ち悪い」
ヒソカの半歩後ろで眉間に皺を寄せそう言ったAの見る先には、この隙に逃げ出そうとする人面猿が1匹
1秒と経たずにその頭にもトランプが命中する。
「これで決定♢そっちが本物だね♡」
見事混乱の中本物の試験管を暴いたヒソカに賞賛の声を上げるものはなく、ただ狂気の彼を遠く恐れるような視線のみが彼に注がれた。
ただ1人
Aだけは、この余興と呼べるほど軽やかではない彼のパフォーマンスに拍手を送っている。
それも心からではなくただ面白がってではあるが。
だが試験官から厳重注意を受けた際には心の底からヒソカを嘲笑した。
「また去年みたいに試験官うっかり殺して失格なんて
マヌケもいいところよ」
「もういじわるだな♢
さすがにもうしないよ、君もいる事だしね♡」
受験者達はまた走り出した
多くがすでに湿原へ足を踏み入れる中、Aだけは止まってただ地面を睨みつけている。
ヒソカも振り返って首を傾げた。
「どうしたの♢」
「…ここぬかるんでて、こんな中走ったら新しいピンヒールがまるでダメになっちゃうわ
この子に乗るにも美しい毛並みが台無しだし…」
そうして横をずっと並走していた狼型の念獣を撫でていると、ふと思いついたようにオーラを展開しようとした。
「…新しい念獣を出すのはやめたほうがいい♧
たとえ鳥型でもね」
「よくわかったわね
…それでなんで?」
少し怪訝そうにしながらAはおとなしくオーラを収めた。
「ここは念能力者ばかりじゃないからさ♤
あんまりどこから来るのかもわからない動物が出てきたら流石に怪しまれる♢
…見えないものにしたら未知の世界だからね」
「…そんな能無しに私が構えっていうの?」
憤慨したように語気を強めたAは、心外の目をヒソカに向けて美しい眉を吊り上げた。
そんな彼女をすら恍惚と見るヒソカは、自分を見上げて睨みつける彼女の顎をすくい上げ鼻が触れ合うほど距離を詰めた。
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まりん(プロフ) - 続き書いてください!!お願いします! (2022年10月1日 17時) (レス) @page7 id: f7a1345d2d (このIDを非表示/違反報告)
かすみ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!!!アダルトリオと幻影旅団のからみ待ってます!!! (2022年2月8日 12時) (レス) @page7 id: e53abe021c (このIDを非表示/違反報告)
ホシ(プロフ) - この展開結構好きかも……続き楽しみに待ってます。 (2020年5月31日 23時) (レス) id: 1713eba148 (このIDを非表示/違反報告)
眠り姫なう - やっばアダルトリオ神だわ…更新頑張って下さい! (2020年5月26日 10時) (レス) id: 27d563ce86 (このIDを非表示/違反報告)
ひはる(プロフ) - ピトーさん» 遅れてすいません!!ありがとうございます!できる限りのペースで頑張っていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします! (2020年4月25日 1時) (レス) id: 0be45b8a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひはる | 作成日時:2020年1月1日 1時