反省と類似 ページ9
鬱先生 Side .
ぱしん、と 清々しい音を立てて自らの手が弾かれた。
何と無く目で追って、手を見ると少しだけ赤くなってしまっている。
… 珍しいタイプの人種だ、鬱は即座にそんなことを考えた。
だが、地雷を踏み抜いたことに関してはきちんと反省している。踏み抜いたとしても、それ以上立ち入らない配慮とかアフターケアとか。
すべき事はたくさんあったはずなのに。
女の子に嫌われるのだけは御免だ、なんてクズな事を考えて少し頭を振った。
取り敢えず謝らないことには始まらない。
「 あ、あの...。御免ね、野暮なこと聞いちゃって 」
嬉しくて、先程から舞い上がっていた気持ちも今はどうだ。おもいっっきり萎んでしまっている。
別に彼女に非があるとは思っていない、完全に自分のせいなのだ。
鬱はへらりと笑って頭を下げた。
頭を上げて、彼女の顔を見たら
彼女は少し表情に嫌悪感を滲ませながら、シンプルなデザインのフォールディングナイフをこちらに向けていた。
切っ先が鼻の先にあって、背中に冷や汗が垂れるのがわかる。
…これは、まずい。
「 え、えっと...？ 」
「 必要以上に、 」
「 えっ？ 」
「 必要以上に、近寄らないでください。それで、気安く触らないで。私たちが住んでた平和安泰な国を、いとも簡単に焼き払ったこと。何人もの友人、国民を殺したこと。生き残った人々を人質に取って、私に脅迫まがいの事をしたこと。
全部全部、許してません。
例えそれが、グルッペン・フューラーの単独行動だったとしても。連帯責任、許すわけにはいきません。
きっとグルッペン・フューラーも、こうなる事をわかっていたはずですし。ね？ 」
フォールディングナイフの刃を手際よく収納して、こっちに投げる。
僕は其れを慌てながらも受け取って、スーツの内ポケットに入れた。
生憎だが、近接戦は僕の管轄外だ。
にっこりと微笑んだ彼女に部屋から追い出された僕は、何が起こったのかをあまり理解していなかった。
ただ、胸に残った気持ちは１つだけ。
「 ゔぅん...、一本食わされたなぁ。 」
そんな言葉を、苦笑いとともに吐き出して。
空気に溶かした。
飽和した空気を吸いたくなくて、煙草を口に咥えた。
ジュッ、とZIPPOのライターで火を付ける。
多分だけど、彼女は少しだけ。____ 僕に、似てる。
これから彼女と接するのが、少しだけ憂鬱で 少しだけ楽しみになった。
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