案内と手 ページ8
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「 ... あとは、話した通りだ。まだ居ない奴とか、忙しくて中々帰ってこれん奴もいるが。頑張って覚えてくれ。
で、だ。Aの部屋はこの前大先生とシャオさんが死ぬ気で掃除したところだから。大先生、案内してやってや。 」
「 んふ、了解〜。いやー、グルちゃんに頼られるのってこんなに嬉しいねんな〜！ 」
目の前で繰り返される茶番と言う名の日常に、思わず眼を見張る。
なんというか、緩い。その一言に尽きる。
緩くて、暖かくて、アットホームな雰囲気。
噂を流す人々は口々に、「 殺伐としてる 」「 冷徹者が多い 」なんて言うから そんなものだと思って居たのだが。
全くそういうことはなく、その点では少し好感度が上がったかもしれない。
… すこしだけ、だが。
話が終わったらしく、鬱は私の方を見てにこにこと満足そうに微笑んでいる。
そこまでグルッペンに頼られたことが嬉しかったのだろうか、変わった人だ。
それでいて、少し。いや、相当怪しいひとだ。
「 じゃ、いこっか？付いてきてね、迷子にならないように！ 」
「 はい。 」
私が鬱の言葉に一言返せば、鬱は更に満足げに頷いた。
そして私を先導するように先を行くのだ。扉をも開け放ったまま、ずんずんと進んでいく。
嬉しさほど人を動かすものはないと言うことか、私は皆に向かって一礼をし。丁寧に扉を閉めて鬱を追いかけた、のだが。
「 アッ！ごめんなっ？ あまりにも嬉しくて先走っちゃった...。さ、Aちゃん。一緒に行こか。 」
数秒で駆け戻ってきてくれた。
そうだな、このままだと迷子になってしまって居たかもしれない。感謝すべきだろう。
気にするな、と言う意を込めて私は首を横に振った。
嗚呼、この国にいると ” 笑顔 ” を忘れてしまいそうだ。笑わない、笑えない。隙を見せたくないし、隙あらば殺して仕舞いたい。
そんな矢先に地雷を踏み抜いてくるのが鬱先生という男らしい。
「 なんでAちゃんは笑わんの〜？ 」
「 ... 思い切り地雷を踏み抜いて来ますね。 」
「 あ、地雷やった？ごめんなぁ、どうにも気になったらすぐ聞いちゃうタチで。言えんかったら全然、言わんでもええよ。信用されてないんだな程度で、 」
「 あ、それですよ。 」
「 え？ 」
「 ただ、信用してないだけです。だから、私はいつでも皆様の命を獲る勢いで接してます故。 」
肩に置かれた鬱の手を勢い良く振り払った。
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