馬車と雰囲気 ページ4
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荒れに荒れた土地を馬車が颯爽と駆け抜ける。
一定のリズムを刻んでいる馬車の中で、私のテンションは最低まで落ち切っていた。
要因は目の前にいるこの男、グルッペン・フューラーにある。
さっきまでは 壊しきれない場の雰囲気に飲まれてしまっていた。そうだ、そうに違いない。
だからあんな言葉を、こんな人に忠誠を誓ってしまったのだ。
嗚呼、騎士たるもの場の雰囲気に飲まれない芯の通った気持ちを持ち続けることが大事。そう教えてくれたのは仕うべき国王だったか。
「 何故そこまで不機嫌になる？忠誠を誓ったのは御前の方だろう 」
「 ええ、そうですね。この際いっそ誓ってしまったことを取り消したりなどはしません。ですが。流石に状況を一気に飲み込めと言われても無理なものは無理です。私の中の概念として、貴方達はまだ敵なのですよ？ ゆっくり国に馴染むことくらい、許してくれますよね？ 」
「 あ、ああ。解った、解った。ゆっくりでいい。だから、じっくりゆっくり。我々の色に染まれ 」
──この人はなんてキザな言葉をスラスラと吐いてしまえるのだろうか。
自分の魅せ方、全てを把握し切ったような自信のある目付きと態度。それから仕草。
きっと、そんな自我を持つグルッペンに惹かれる女子も少なくないはずだ。
馬鹿らしい、そして格好いい。
敵の私から見ても、闘いの後線で髪を振り乱し、笑みを湛えながら指揮をとるこの男は格好良かったのだ。
勿論ビアンカの国でも憧れのまと。だが、それを叱咤するのも私の役目であった。
「 グルッペン・フューラー...様、いえ。総統閣下。ここはどこでしょう。 」
「 ...... ん”ん、まぁ良い。そうだな、そう、いずれ慣れた時でーー、 」
「 総統閣下？ 」
「 あ、あぁ。ここはもう我々国だ。今は城に向かっているのだが、そうだな。この国はビアンカほど広い訳ではない。だから一息つけば着いてしまうだろうな。もう降りる準備をしたほうがいい。降りたらその服についた泥を少し払ってから、 」
がたん、グルッペンの言葉の最中に馬車が大きく揺れた。
座っていた私ですらつんのめって、椅子から転がり落ちそうになってしまう。グルッペンは慣れた様子で溜め息を吐きながらも「 此処は如何にかならんのかねぇ、ほんまに 」と、さらりと方言を使っている。
また、知らないグルッペンの一面を見てしまった。
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