仕事と接触 ページ11
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忙しなく回る厨房を 私は口を開きながら見ていた。
一応元騎士なのだ、鍛錬ばかりで厨房なんか少々足りとも覗いた覚えは無い。
だが、忙しそうな彼女たちを見ていれば自分も何かしら動かなければ、という気持ちになる。
派遣されて早々、仕事を頼まれずに放置されるのも中々に寂しいものだ。
幹部の奴らは連帯責任として忌み嫌う予定ではあるが、ここで働く人たちには何の罪もない。
上に、良い人ばかりで寧ろこちらが気を遣ってしまう。
「 パティさん、私は何をしたらいいのでしょうか。 」
恐る恐る食後のお茶を淹れているパティに声を掛ければ、嬉しそうな声が返ってきた。
相変わらずぱたぱたと揺れるツインテールが彼女の機嫌の良さを形容している。
「 これ淹れ終わったら運んできてもらえますかぁ？ 」というお願い内容だったか。彼女のツインテールを目で追っていたら聞き逃してしまっていたらしい。
まぁ、どうせ会議室 _ か、食堂だろうか。誰がいるのだろう、パティの手元にはティーカップが９つと、マグが１つ。
誰に持って行くのだろうか。
「 はいっ、じゃあこれお願いしますっ。食堂に９つ、このマグは機械室に！ロボロ様がいらっしゃるのでお渡しして下さい♪ 」
「 了解しました 」
「 もうっ、そんなに固くならないで下さいよ！ 」
「 お気遣い恐れ入ります。失礼します。 」
口調は致しかたない、此れが癖なのだ。
パティからトレイを受け取って、慎重に歩く。
此処から食堂まではそう遠くないが、気を配ることが最優先だろう。
まぁ確かに心の底ではこのティーカップ全て割り捨てて逃亡したい気持ちが有るのだが。
辞めておこう、背筋が冷える。
食堂 、というプレートが見えて私は嫌々扉を鳴らした。
____ ああ、そういえば鬱とは気不味くならないだろうか。先程手を弾いてしまったことは少し悪く思っている。
ただ、謝る気は毛頭無い。何せ、私は嫌な事を嫌と言ったまでだから。
「 どうぞ 」
この耳に心地よい声はきっとトントンだろうな。
もし敵国の者でなければ純粋に好きになれる声だった、耳に焼き付いて離れない。
他の皆も声がやけに特徴的で、直ぐに覚えられた。
…容姿も同様に。
「 失礼します。食後のお茶をお持ちしました。 」
ゆっくりと扉を開き、私は部屋の中に失礼した。
ふっと視線が全て私に集まり、何処か心地が悪かった。
すぅ、と背筋を伝った冷や汗に私は気づかないふりをしたのだ。
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