提案と理由 ページ2
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ふっと、まるで息を吐くように自然に紡がれた言葉に 私は笑みを固まらせた。
── さあ、どうすべきか。
この人、グルッペン・フューラーはまるで私の心を見抜いているようだ。
この先、植民地にでも属国にでも なり得るこの土地をどう纏めて行くのか。住むところは、行き場のなくなったヒトへの対処は。
全ての責任を負うしかない私に、差し伸べられた一筋の闇。何故だ、何故こうなった。
先ず、この戦争の理由はなんだったのか。
希少資源の奪取？土地や人的資源の増強？
何より、よくわかっていない状態で戦っていた私が馬鹿らしく思える。
我々国の宣戦布告をまともに受けてしまった時点でほぼ負けは確定しているようなものだ、と かのエーミール氏は言っていた気がする。
「 声に出ているゾ。というか、エーミールと知り合いなのか？ 」
「 ええ。少し、教養を。」
「 そうか。... まぁいい 本題に戻ろう。お前は如何する？もしお前が我々国に素直に引き抜かれてくれると言うのならば 私はこの国 、” ビアンカ ” の残りの国民の安全を保障しよう。建て直しに関しても人員を派遣するし、如何だ。悪い話ではないだろう？ 」
グルッペンに提示された条件を、ひとつひとつ噛み砕く。
抜け穴はないか、保証は絶対なのか。
聞こうにも聞けないのが状況なのだが、私は唯一気になっていることがある。
聞かずにはいられず、つい目線を合わせたまま疑問を問うた。
「 何故、私にそこまで執着するのです？ 」
「 と言うと？ 」
「 少し、買い被りすぎなのでは？私にそこまでの実力はありません。なにより、数分前までは敵国を護り、自国に容赦のない攻撃を入れていた騎士なのですよ？ そんな危険分子を、貴方は何故そこまで欲しがるのですか？ 」
そこでグルッペンは驚いたように目を見開き、そして満足そうに微笑んだ。さらに 泥と血が混じった戦場に膝をつく。
綺麗な黒い軍服が汚れたが、グルッペンは気にも留めず私と目線を合わせた。
そして、下衆っぽく笑い、目を細める。
そっと頬にあてがわれた手は、手袋のせいか 心成しか冷たく感じた。
「 理由などいるものか、私がお前を気に入ったからだ。 」
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