【ハイキュー】息をしながら死んでいる。

13 ページ13

「お前らなにか知ってるのか」
「いや、俺らも女バレからちょろっと噂聞いただけなんで詳しくは知らないんすけど」
「影山の方が知ってるんじゃないか？」


王様も他人に大して興味なさそうなくせに、バレーに関係する人なら男女関係なくしっかり覚えてるんだ。
どこまでもバレーだけだな。


「俺らの世代で県内で一番上手い女子です。中学のときにベストアタッカー賞とか取ってました」
「え、なんでそんな凄い子が」
「確か３年のときの試合で怪我したらしいですよ。それ以来引退したらしくて。うちに来たってことは新山女子辞めてるってことだし」


あー、思い出した。
上条４兄妹の真ん中か。

顔までは全然思い出せないけど、いつ見たのかは思い出した。


兄ちゃんたちの代では世代ナンバーワンと言われてた上条拓斗。
その人の母親だか父親だかも元日本代表で、他の兄妹も全員バレーが上手いって有名だった。


兄ちゃんがよく話してたから記憶に残ってたのか。


「全中優勝してたり色々全国経験してるんで経験値はばっちりありますよ、そいつ」
「うちの戦術見てくれたりしねえかなあ」


鵜養さんの戦略力ってそんなに悩むほどのものか？
青城には負けたけどあそこまで粘れたのは鵜養さんのおかげもあるだろうに。


「まあその経験値高いバレー辞めてるわけだしな」
「頼んでもやってくれるとは限らねえべや」
「……僕が話してみましょうか」


正直、全国トップレベルのやつが辞める理由なんて理解できない。
環境も才能もある選手が辞めるなんて尚更そうだ。

誰でも時間を費やせばトップになれるわけじゃない。


「先生本当か？！」
「もちろん本人が嫌と言えば無理強いはできませんし、したくありません。でもきっとバレーが嫌いになってしまったわけじゃないと思いますし」
「頼んだぞ、先生」
「まあ本人次第ではありますが。あんまり期待しないでくださいね」


全部持っていても捨てたくなった理由、捨てざるを得なかった理由なんてものがあったのか。


「ま、僕には関係ないケド」



＿＿＿＿そう思っていた僕が、いつの間にかそいつと大きく関わっていくことになるとはまだ少し先の話だ。

14→←12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す