【文豪ストレイドッグス】文豪【教科書】 (ページ2)

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遺言人虎　<ごんぎつね> ページ2

「っ...お前が静かだと寂しいではないか。」

「大丈夫だよ国木田くん。私はまだ死なないから...。ただ、最後に蟹が食べたいな...」

「蟹か?嗚呼分かった、少し待っていてくれっ!」

そう言って家を飛び出していった国木田くん。

「...ごめんね、国木田くん...。」

そう言って、ゆっくりゆっくりと国木田くんに見付からないようにアノ場所へと足を運ぶ。

「太宰、蟹を持ってきたぞ!!...太宰??何処だ！どこに居るんだ??!!」

太宰が消えた。

「何処だっ!!太宰!!」

居ない。何処にも居ない。

「...っ直ぐに見付けるから待ってろよ。」

アノ場所に崩れ落ちた私の前に白い虎が現れた。

「嗚呼、君か。待っていたよ。」

その虎は私の手の届くところまでやってきた。

「君にこれを託すよ、国木田くんに届けてくれるかい?」

虎はひとつ頷くと私の手からアル物を受けとり薄れゆく意識の中でゆっくりと離れていく。

「国木田くん...ずっと..待ってい..るから.....ね..........」

太宰が消えてから、もう一週間も経ってしまった。

何処を探しても見付からない。

太宰はまだ生きているだろうか？

ｶﾀｯ

今日も物置の方から音がする。

太宰が消えてから、毎日物置に色々なものが届くようになった。

昨日は筍にヨモギ、一昨日はふきのとうとタラノ芽。

もしかしたら太宰なのじゃないかと、そう自分に言い聞かせながら物置に向かう...。

扉を開けると其処には沢山の山菜と何処かで見たことのある白い虎が居た。

毎日届いていた山菜の送り主が分かったと同時に寂しさが込み上げてきた。

静かに込み上げてくるものを堪えながら虎に近付く...すると其処には白い封筒があった。

騒ぐ胸をおさえ、封をきる。

＿＿＿＿＿

国木田くんへ

この手紙を国木田くんが読む頃には私はこの世界に居ないと思うんだ
先に逝くのを私を、そして何も言わずに急に消えた事を許してほしい
私はいつも国木田くんのことを怒らせて困らせていたね
それでも今まで一緒に居てくれたことに感謝するよ
これからは私のことは忘れて幸せに暮らしてほしい
今までありがとう
そして............さようなら

＿＿＿＿＿＿

白い虎が静かに立ち上がった。

自然と足がそのあとを追った。

辿り着いた先は太宰と初めて出会った場所だった。

虎が静かに腰を下ろした先には幸せそうに眠る太宰が居た。

気が付くと何かが頬を伝って零れていった。

「俺が逝く其の時まで待っていてくれ...。」