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左耳に宝石がちりばめられたピアスが2つ。西洋風の柄が入った、生地の厚い着物。
風貌だけを見るとどこかの豪族のようである。

「直接会ったのはもう3年ぐらい前になるのかな?」

口を真一文字に結んだまま開こうとしない颯天には構わず、男は嬉しそうに切れ長の目を輝かせる。

「颯天が俺のところから逃げて、うちがどれだけ取引相手に謝ったと思ってるの?
あの時は本当に大変だったんだから。

まあそのお掛けで、今は天導衆の御方とより良い関係を築けているわけなんだけどさー。」

颯天は応えない。代わりに刀を構え直し、男をにらみつけた。

「え、ちょ、やめてよ。
物騒じゃないか。」

男は大袈裟に驚いた素振りを見せた。
いつのまにかまた、兵がグラウンドに押し寄せてきていた。このままここでじわじわと颯天を追い詰めていくつもりなのだろうか。

「いくらお喋りをしていても、何も進展はないようだ。
時間は無限にある訳では無い。
もう"彼"を呼んでもいいかね?」

これまた長身の男が1人出てきて、若い男の横に立った。肌の色から察するに天人だ。

「ええ、お願いします」

2人は言葉を交わすと、颯天をもう一度じっと見てから船内に戻って行った。

少し削られ始めていた体力は回復してきていた。怪我一つ無い身体。しばらく立ち話でもしていれば、それなりに戻りもする。

しかし、精神はまた別。
先程から颯天は妙な悪寒を感じていた。あの男が現れたということもあるのだが、あの男の執念深い視線とはまた別に、鋭い殺気を。
憎しみも、哀しみもない、純粋な殺気。狂気とも言える殺気。

その時、今までの持続的に感じる悪寒とは段違いの、鋭い悪寒を感じた。
その正体を確認するために頭上を見上げると、もうすぐそこに傘の先が迫っていた。その正体を確認する暇などなかった。
素早く身を捩って避けた直後。

ドーン

凄まじい音とともに砂埃が上がり、先程の"誰か"が微笑んだ。

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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時

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