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思わず言葉を失う。
同級生の家に見舞いに言ったら、人を殺せる正真正銘の武器を手に、警察と化け物じみた戦闘(喧嘩)をしているなんて、誰が予想するだろう。誰が平静を保って眺めていられるだろう。
目の前の衝撃的な光景に唖然としている間にも、彼らの渾身の一撃がぶつかり合った。
ガキィィィィィィン
空気を砕く振動と音。
思わず目を強く瞑った。
「てめぇら・・・止まれっつってんだろ・・・」
ピタリ
唐突に戻った静けさのなかで低く唸るような声。恐る恐る目を開けると、刀と鞘を両手にそれぞれ構え二人の刀を食い止める土方の姿があった。途切れた戦いに二人は戦意を喪失。不満げに刀を鞘に納めた。
「始末書が待ってるぞ。
まあ、颯天はその前に事情説明をしねぇといけねぇ見てぇだが」
土方がある一室を顎で指す。その瞬間、颯天はすべてを察した。それでも迅速に事実を受け止めるために、ため息をついて顔をそちらに向ける。しかしまだ最後の1歩を踏み切れないようで、目だけは土方の目を見つめている。
「横を見たらきっと甘味の山があるんですよね。
そうですよね、土方さん。」
「ああ、そうかもな」
「あの・・・颯天ちゃん・・・?」
学校とは雰囲気が540度ほども違う颯天に天は恐る恐る声をかけた。
目の前の少女が確かに自分の知る颯天であるのか確認をするように。
「随分と良いサプライズですね。
感激ですよ、涙が出そうだ。」
「気に入って貰えて良かったよ」
状況を理解しようと必死に頭を回転させる天と亀竜。言い訳を考えようと必死に頭を回転させる颯天。そんなようすを嘲るように見つめる沖田。何故かキラキラとした目で颯天を見ている宿名。他人事の土方。おろおろとせわしない山崎。まるでそういう人形のようにみなが同じ動作を繰り返している。
五月蝿いセミの声だけが、確かに時が刻まれていることの裏付けだった。
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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時