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「········」

土方の言葉に確かに頷いたとはいえ、やはり憂鬱だ。
学校嫌い、なんて少々子供じみているかもしれないが、どうしてもあの空気感を好きになることは出来ない。特に、数年間自分の身1つで生きてきた野良猫のような颯天には。
時計は8時30分を指していた。ホームルームが8時20分、授業は確か8時45分から始まる。遅刻がどうとか、はっきりいって気にしていない。ギリギリまでここ、校舎裏に居座っていよう。数秒前に滑り込めばいい。
刀も無線も取り上げられた。懐には苦無が数本と、拳銃が一丁だけ。ここではただの学生なのだから、当然なのだが、なんだか少し落ち着かなかった。

パン

「ッッッ!!!!」

本当に唐突だった。気配も視線も感じなかった。
乾いた音と共に颯天の背後の壁に勢いよく飛び込んでいったのは銃弾。少しでも反応が遅れていたら、今頃颯天の肩あたりには風穴が空いていただろう。
急いで苦無を構えるが、銃弾が放たれたであろう茂みからは物音ひとつしない。

「·····通信式の固定銃か。」

狙われるような覚えが無いわけじゃない。誰がこれを仕掛けたのか検討はついた。

颯天の身体の黒い塊が、じくりと痛んだ。

ここが知られている、ということは、ここに何かしらの攻撃をしてくるつもりなのだろう。刺客か······罠か······。

固定銃をじっと睨みつけていると授業開始の鐘がなった。強引に思考が学校に引き戻される。

「よし、行くか。
走ればギリ間に合うかなー」

自然と口調は軽くなり、口角が上がった。

『また演技』

昨日の言葉が蘇る。
そうだ。演技だ。全てを疑い、睨みつけたくなるような状況なのに、今自分は笑っている。
無邪気に笑っている。

でも、これも自分だ。

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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時

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