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「また子、万斉、一旦引くぞ」

高杉は不機嫌を露にしながらそう指示を出す。船内にいる意識がある者は、幹部の二人と僅かな兵のみ。敵対する真選組が、ほぼ全隊士ここに乗り込もうとしている今、事態は非常に緊迫している。

「「「うおおおおおおおおおおおおお」」」

高杉に接近できる機会などそうそうない。感情の昂った隊士が土方の指示を待たずに巨大な戦艦によじ登ってきた。船はエンジン音のような音とともに少しずつ飛び立とうとしているにもかかわらず、彼らは怯む様子もない。
意識のある者はみな巨大な戦艦を動かすのに駆け回っていて、とてもじゃないが相手などしていられない。
そのとき高杉が動いた。刀を抜き、凍てつくような視線で船の縁にしがみつく隊士を見下ろした。

"殺される"

急な恐怖に怯んだ彼ら、しかし刀が振り下ろされることはなかった。彼らは高杉の物よりさらに鋭い、しかし自分達には向けられていない殺気に気づいた。
そして次の瞬間

ガキィィィィン

火花の散る刀のぶつかり合い。先程まで身体を押さえ、肩で息をしていた颯天がいつまにか高杉に刀をぶつけていた。高杉はなんとか刀でその攻撃を弾いたようだが、頬には傷が刻まれた。

「・・・言ったよな・・・殺すって・・・。
ついさっき言った子供の忘れちまうような鶏頭だったか?てめぇは・・・。」

囁くような声は高杉にしか届かなかったが、それでも場にいたすべてに異様さは理解できていた。

「・・・お前が退かないのなら、さっき言った警告の通り動いても、俺は構わない。」


「……チッ…無茶言うなって」

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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時

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