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「ちょっとここで待ってて」

大きな門に掛かる"武装警察真選組"の木製看板や、両側に佇む二人の見張り番は、一般に人に緊張感を与えるのだろうが、颯天の友達、と聞いて、十人が十人例外なく狼狽えて駆け出していく様子はどうも滑稽で親しみが沸き上がる。

「副長!!ふくちょーう!!」

「うるっせぇぞ!!」

屯所内から聞こえた怒声に門の前で待っていた三人は首を竦めた。

「副長!颯天ちゃんのお友達が来てまして」

「あ"?まだあいつは昨日一日しか行ってねぇだろ?」

「まあ、そうなんですが・・・」

やはり少し図々しかっただろうか。迷惑だろうか。もし颯天が風邪で大変ならプリントだけ届けて早く帰った方がいいんじゃないか。そんな不安が天と亀竜の頭によぎる。しかし隊士から出た次の言葉はそんな不安をかきけすものだった。

「でも、良かったですね」

「まあな」

彼らが門に向かってきているため、最後の言葉ははっきりと耳に届き、そのせいか大きく心に響いた。

「お前らが颯天の?」

「「「はい!」」」

目の前に颯爽と現れた男は整った顔立ちを、いかにも不機嫌といった感じに歪めている。しかし不思議と恐怖は感じなかった。先程の言葉のお陰かもしれない。

「山崎!案内しろ!」

「はい!副長!」

敬礼を決め、駆けつけたのはいかにも気弱そうな男。「颯天を呼んでくる」と去っていく土方の背中を見送ってから、三人にへなりと笑いかけた。

「俺はここの観察の山崎です。
客間に案内するから着いてきてください」

「あ、お構い無く。
私たち、颯天ちゃんとちょっとお話できれば大丈夫なので」

このままお茶や菓子折りでも出され、手厚くもてなされそうな雰囲気だ。三人はプリントを届けて、少しだけ話ができればいいというのに。

「うーん…まあ、ここ一応重要な書類とかあるから決まった場所にいてほしいっているのもあるかな、正直。でもまあそれより、暑い中来てくれたんだからおもてなししなきゃね!」

そう言われてしまえば断るわけにもいかず、言われるがまま屋内に上がった。

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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年6月14日 6時

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