明るい男の子が実は無表情な女の子だった件について。 (ページ9)

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ｶﾁｬﾘ

微かな音とともに沖田の左胸に銃が突き付けられた。わずかに遅れて沖田も少年の喉元に刀を突き立てる。少年が本気であったなら、恐らく沖田は今ごろ死んでいる。
沖田は予想外の敗北に顔をしかめたが、すぐに口角を上げて勝ち誇ったかのような顔で

「猫被ってたのバレちまったなぁww」

もう隠すのは諦めたのか少年は大きく舌打ちをすると拳銃の安全装置を留め、腕をだらりと垂らした。
上がっていたはずの息が嘘のように落ち着いている。嘘のように、というか事実、嘘だったのだが。

「そろそろ退いてくれませんか？」

急に声のトーンを下げ威嚇する少年に、沖田は黙って退いた。すぐに少年は立ち上がり、壁・床・天井に無数に刺さる苦無を、慣れた様子で素早く集める。
しんと静まり返っている。それもそうだ。自分達が可愛い可愛いと散々揶揄してきた少年が隊内最強の男を負かしてしまったのだから。軽く恐怖を感じるのもなんらおかしくはない。

「甘味もらったりしたときは素直に嬉しかったですよ。
甘いものは本当に好きなので。」

少年は土方の制止を無視して稽古場から庭へ靴も履かずに出ていき、塀にそっと触れた。

「それでは、ありがとうございました。」

深々とお辞儀をしてから、塀の上、一般民家の屋根、電柱の上・・・と軽々と飛び移りあっという間に見えなくなった。

三日間、確かに真選組に保護されていた少年は、存在自体が幻だったかのように一瞬にして消えてしまった。