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「あの場合、正当防衛になるでしょう?
あれだけの人数が自分を殺そうと飛びかかってきたんだ。怖くて怖くて、必死に刀を振り回してうっかり殺してしまった。」
目の前の自称14歳の男児。縁側に腰掛け足をぶらつかせながら、団子の串を手に弄んで見せた。
「確かにあの状況なら正当防衛が容易く立証できるが・・・」
そのとなりで書類の内容に顔をしかめているのが真選組副長土方である。
「早く帰りたいんです。親父とお袋が家で待ってるんだよ。
何度も言うけど俺は家出をしようとしていたところを怖いおじさんたちに襲われて、小さい頃から習ってた剣道で何とか太刀打ちしただけなの!
刀はじいちゃんの形見を持ってただけだし。」
口を尖らせてそう答弁する少年を、土方は訝しげに見つめた。確かに少年が持っている刀には普段は布が巻かれているようで、お守りのような意味を持ったものに見える。しかし、不可解な点が多すぎる。すぐにすべてを信じられるわけがない。
「なら答えろ。
お前の名前は何で。
住んでいるのは何処で。
親の電話番号は何で。
どこの寺子屋に通ってるんだよ。」
既に数十回と繰り返された質問。しかしこの少年ときたら、何度問いただしても言い訳を並べて口を割らないのだ。
そこで行方不明の少年の捜索願を調べてみたのだが、目の前の少年と一致するものはゼロ。もうあの事件から3日だ。親はいったい何をやっているのだか・・・。
「副長さーん、暇です。ちょっと町を散歩してきてはダメでしょうか。」
「ダメだ。逃げるだろ、テメー」
少年は数回ここからの脱走を試みていた。しかし毎度誰かが声を掛ければ素直に戻ってくる。
「いやー、逃げませんよ〜。
健全な青少年には青い空のもとを散歩することは重要なんですよ?」
最初こそ身体を震わせ、激しく咽び泣いていたが、真選組がそれでも聴取のために少年を解放しないでいると、すっかりこの調子になった。
土方は戸惑いを感じていた。おそらく隊士のほとんどがそうだろう。恐怖すら感じている者もいるかもしれない。
人を簡単に殺しておいて、戸惑いも動揺も見せない。14の少年の行動にしては不可解、いや狂気を感じる。
常に笑顔を絶やさない少年に、正直鬼の副長も気が滅入っていた。彼にはどうにも子供らしさ、いや、人間味がなかった。
「土方さんもお手上げですかぃ?」
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沖田ファン - プロフィールの高杉晋助の漢字が違いますので、訂正お願いします。 (2019年3月2日 15時) (レス) id: a06ab380f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年4月8日 9時